自分との対話~卒業式での校長式辞

2025年3月19日

田原小学校令和6年度卒業生として本校を巣立つ42名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。また本日は、多くの来賓の皆様、並びに保護者の皆様にご臨席を賜りました。卒業生、教職員を代表して、心からお礼申し上げます。

さて、只今皆さんにお渡ししました卒業証書は、6年間いろいろな困難を乗り越え、頑張ってきた証です。皆さんは登下校や縦割り活動等の際に、下級生に対して常に優しい眼差しを向けてくれていましたし、何より6年生の教室にはいつも穏やかで温かな空気が流れていて、私は皆さんが醸し出す雰囲気がとても好きでした。これから大きくなってもずっと今のままの雰囲気でいてほしいですし、やりたいこと、できることを見つけて、ひたすら前を向いて歩き続けてほしいと願っています。

そうは言いましても、「自分探し」などという言葉があるように、現代の若者の中には、「自分には何ができるのか」「何をやりたいのか」がよく分からないという人も多いようです。私は、自分自身を知るためには、これからの長い人生の中で、いろいろな人との対話、自然や動植物などいろいろなものとの対話、地域行事や習い事などいろいろなこととの対話、それらのことに加えて自分自身との対話、そういった「対話」を重ねることではないかと考えています。

ここで少し、皆さんと一緒に自分との対話というのを実感してもらおうと思います。私が今から三つのことを質問しますので、頭の中に思い浮かべてみてください。(発表してなどと言わないので安心してください)では、考えやすいように目を閉じてみましょう。まず一つ目、「自分にとってできて当たり前だと思うこと」です。二つ目は「最近、すごく腹が立ったこと、悔しかったこと」です。三つ目は、「お金や時間をついつい使ってしまうこと」です。質問はこれで終わりです。目を開けてこちらを見てください。

ここで種明かしです。自分にとってできて当たり前だと思うことは実はあなたの得意なことです(これは昨日の修了式でもお話ししましたね)。腹が立つこと・悔しいことはあなたが大切にしていることで、ついついお金や時間を使っていることはあなたの好きなことです。つまり、好きで、得意で、大切なことが、あなたが本当にやりたいことということになります。

例えば、冷蔵庫にあるもので適当に何か作るのは当たり前にできるという人がいたとしましょう。テストで悪い点を取って馬鹿にされても腹が立たないのに、自分が作ったものを「あまりおいしくないね」と言われるとカチンとくる、さらに家電製品や料理器具のお店についつい行きたくなるというなら、その人はもう料理をやりたいと思っているのでしょう。

ちなみに私はできて当たり前だと思ったのは、「誰にでも笑顔で誠実に接する」ことを思い浮かべましたし、子どもをないがしろにするような虐待や体罰といったニュースを目にすると無性に腹が立ちます。さらに本屋さんに教育関係の本があるとついつい買って見てしまいます。そう考えると私は、つくづく教師という仕事が好きでやりたかったことなのだと思い知ります。皆さんと同じく、私も三月末をもってこの学校を卒業しますので、また新たに自分との対話の中でやりたいことを見つけていこうと思います。

もしかしたら、皆さんの中に「自分のやりたいことが分からなかった」という子がいたかもしれません。でも、がっかりする必要などありません。人生は長いのです。これから時間をかけて、いろいろな人・もの・こと・そして自分との対話を重ねるうちにいつか見つかるものです。焦らないことです。

最後になりましたが、保護者の皆様におかれましては、高い所からではございますが、心よりお子様のご卒業をお祝い申し上げると共に、これまでの田原小学校に対する温かくそして熱いご支援・ご協力に感謝し、心から厚く御礼申し上げます。結びになりますが、卒業生全員の前途に幸多かれとお祈りし、式辞といたします。

自分にとっての「当たり前」~3学期修了式での校長のお話

2025年3月19日

今日は、とうとう一年間の終わりの日になりました。自分自身を振り返ってみると、去年はできなかったことが、今は当たり前にできるようになったという子もたくさんいるのではないでしょうか。最初はできなかったことも、頑張ることでできるようになることはたくさんあります。そして1回できたことが、いつもできるようになれば、それは自分にとっての「当たり前」になります。当たり前になるということは、その能力が「得意なもの」の一つになったということです。それこそが成長の証です。

今、各学年代表の人に「修了証書」を渡しました。これは、先程お話ししたように、皆さんがこの一年間、しっかりと努力し、それぞれの学年で学習すべきことを見事に修了できたという証です。ですからみなさんは、4月から1つ学年が上がることになります。しかしながら、皆さんは決して一人で成長できたわけではないですね。お父さんやお母さん、そして先生方が陰になり日向になり皆さんを支えてくださったおかげだとも言えます。そして何より今日の日を喜んでいると思います。ぜひ、お礼を言えるといいですね。

さて、3学期の始業式の折に私は皆さんに、自分たちの力で学校が「より落ち着ける」「より安らげる」場所になるよう心掛けてくださいとお話ししました。皆さんのことを見ていると、以前より、友達に優しく接しようという姿が多く見られましたし、イライラしそうになっても我慢して友達と距離を取ろうとしている姿も多く見られました。友達同士のもめごとを、ピアサポートを使って自分たちで仲直りさせようとする姿もあったと聞きます。心の成長を感じる3学期にもなりました。

さて、明日から春休みです。4月からまた新しい「わたし」をスタートさせることになります。来年度を最高の一年にするためには、まずはいいスタートが切れることが大事です。ぜひ、春休みのうちに心と身体の準備をしましょう。私はこれからも皆さんが自分の得意なことや好きなことを伸ばしてくれることを願っています。以上で、私のお話を終わります。

田原小学校が目指そうとしていること(入学説明会にて)

2025年2月4日

お時間をいただきまして、本校が今年度取り組んできたことや今後目指そうとしていることについてお話しさせていただければと思っています。

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まず、本校職員の使命ととらえる「田原っ子をいい顔にすること」を「学校経営目標」に示し、何が「いい顔」かと問われれば、学校教育目標の「ゆめに向かい 本気で取り組んでいる」ときの顔だと考えています。

「ゆめ」とは「日々の授業や単元を通してできるようになりたいこと」「なりたい自分に向かって、日々目指していくものやこと」という自分自身に関するものに加え、「こんな学級にしたい」「こんな行事にしたい」という自身が所属する学級や学校に関するものと捉えています。さらに、「本気」とは、「熱中する」「一生懸命」に留まらず、うまくいかない、思ったようにできないときに簡単にあきらめない姿を目指しています。

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本校の現状について少しお話をさせていただきます。1年1組は32名となり、全校で210名の児童がともに学ぶことになります。直近の児童数と学級数の推移を表したものを見ると、学級数は年々減少しています。静岡県の基準では1学級当たりの児童数の上限は35人となっているため。1学級となっている学年はすべて上限ぎりぎりであり、教室が狭く感じます。

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本校は、これまで「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくり」を整えてきました。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態を「学級担任制」と呼ぶならば、本校は、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる「チーム担任制」を取り入れています。

チーム担任制本来の目的は子どもの主体性を伸ばし、子ども色のクラスを造ることにあります。子どもが学級担任一人に頼り切るのではなく、自主的・自治的風土を醸成するとも言い換えられます。

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田原小学校流のチーム担任制を一言で申し上げるならば、「教科担任制」と「合同授業」と「担任ローテーション」のハイブリッドな取組であると言えます。さらにこのことがうまく機能するために、全職員で次の3つのことについて共通理解を図ることとしました。

1つ目に「隣の学級」の意識を捨てるということです。隣の学級に簡単に口出しできないとの意識を捨て、早い段階から子どもの見方や指導・支援方法を話し合える職員風土の醸成をつくっていきます。

2つめは「広く・深く」の情報共有です。多くの職員が子どもとかかわるだけでは「広く・浅く」の子ども理解になってしまいます。いかに職員が知り得たことを共有できるかがチーム担任制の成否のカギとなります。教員が教室を移動する際や放課後など短い時間はもとより1週間の中で1~2度は「チーム情報共有会」を放課後に設定しています。

3つめは、対等な立場で話し合うということです。ベテラン教員に若手教員が教われば良いとかベテラン教員の指示を受けていれば良いなどの考えはチーム担任制を推進するうえで弊害となる考え方です。指導の場ではベテランも若手もなく、対等に語り合うことが重要です。

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本年度は、1年生から3年生までを「低学年チーム」、4年生から6年生までを「高学年チーム」として取り組んできました。学校評価アンケート結果のうち、「学校が楽しいと感じる」は子どもも保護者も学期を経るごとに肯定値が高くなっています。

子どもたちは、「話せる先生が増えて嬉しい」「私が困っているのに気づいてくれて嬉しい」「授業が楽しみになった」「授業の内容がよく分かる」などに加え、「もっといろんな先生とやりたい(同じ先生の授業が多い気がする)」などという意見もあるほどです。

保護者からも「たくさんの先生が子供のことを知ってくれるという安心感がある」「『先生のようになりたい』と思える理想像が増え大人への夢を描けるので良い」といった意見がある一方で、少数ではありますが、「1人の職員が100名近い子どもを把握できるのか」「誰に相談して良いかわからず混乱する」といった不安を抱く方がいることも事実です。

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チーム担任制の3つの取組のうち「合同授業」の一部を紹介します。1年生と2年生が合同で生活科「学校探検」を計画して実行しました。2年生がいつも違うお兄さんお姉さん顔になっています。5年生が4年生の教室に行き、ミニ先生になって算数を教えるといったことも行っていますし、6年生が5年生に対して観音山宿泊体験に関するガイダンスも行いました。これらの取組により、「いろいろな学年の子とかかわりがもてている」については、2学期に大きく数値を伸ばしていることがわかります。さらにコミュケーションの基本である挨拶に関する数値も高くなっていることがわかります。

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次に教科担任制の取組についてもふれておきます。中学校以降はこの「教科担任制」が普通ですので、保護者の方々にもなじみ深いと思います。職員の反応として、「特定の授業に特化でき、教材研究に集中できる。」「子どもたちは担任が変わることを不安に思う子もいたが、徐々に慣れ、色んな先生との関わりを楽しんでいた。」など前向きなものが大半でした。

「授業で学習したことはよく分かる」と答える子ども、「先生は子どものことを理解して指導にあたっている」と答える保護者の割合も2学期末の方が高くなっています。

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現在、全職員で来年度の教育課程について話し合っています。その中で、「チーム内の職員数が多い」「3年生と4年生は同じチームの方が運営上効果的である」などの課題が出されました。先程も申しました通り、教師が子どもを理解できるか、保護者がどの教員に相談してよいかなどの保護者からの不安の声もあります。そこで、「2学年編成のチーム」を前向きに検討したいと考えているところです。こうすることで、チーム内の2人の職員は、ともに「主担任」という位置づけになります。子どもたちには、「自分の学級に担任の先生が2人できた」と思ってもらえれば、より相談しやすい安心感を高めることができると考えています。教員側からしても、 以前と比べ一人の職員が把握すべき子どもの数が減少することで、深い子ども理解の実現に近づけるでしょう。

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深い子ども理解を図るためには「交換授業」と「担任ローテーション」の両方が必要です。授業での様子と休み時間などの学級内の友達同士のかかわりの両方の姿を細かく観察し、子どもと接する機会を増やすことが深い子ども理解につながります。

 特定の教科において、チーム内2人の職員の交換授業を行うことで、どちらの職員も授業中の子ども一人ひとりの表れを理解するとともに、子どもと話しやすい関係づくりを構築します。

 授業での子ども理解や子どもとの人間関係を築いたうえで、担任ローテーションを定期的に実施します。ここでは授業以外の友達同士のかかわりを観察するとともに、関係の乱れ(いじめや落ち着きのなさなど)が見られたら早めに指導を行うことを目的とします。

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 終わりになりますが、私たちの取組を一言で申し上げると、人と人の「つながり」を意識することで、子どもたちの「いい顔」をつくるということに尽きます。

先生と子どもとのつながりは教務主任が中心に教科担任制を充実してくれました。子ども同士のつながりは新たな時間割に基づいてチーム内で検討して合同授業を進めてくれています。さらには先生同士のつながりはチームリーダーが中心になり情報共有会を進めてくれています。

今後もよどみなく、緊張感をもって全職員で取り組んでいきたいと思います。長い時間、お聞きいただきありがとうございます。

学校を「より落ち着ける」「より安らげる」場所に(3学期始業式)

2025年1月7日

改めまして「あけましておめでとうございます」

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なぜ、新年が明けてこのように挨拶するかというと、昔は戦争や病気・災害など誰もが不安定な生活を送り、明日の命すら保障できないほどだったことから、無事に年が明けたことや年神様を無事にお迎えできたことに対して「おめでとう」とお互いに言い合ったのが今も続いているのですね。

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今年は何年か知っていますか。昨年度もこの絵を皆さんにお見せしましたが、「子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥」の十二支のうち、今年は6番目の「巳」年になります。

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3学期はわずか49日間しかありません。今の仲間と過ごす大切な一日一日になるよう、そして日々悔いのないように過ごしていってほしいと思います。そこで、私の願いを込めて、私の昔話から始めてみようかと思います。

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小さかった頃、私は学校という場所がとても好きでした。学校は安らげる場所であり、自分の心が落ち着く場所でした。友達からバカにされることもなく、かと言って特別扱いされるわけでもなく、ただ普通の友達でいてくれました。小さい頃ですので、面白半分で後先考えない行動もしましたが、そんな時は先生がでっかいカミナリを落としてくれました。怒られても愛情を感じていたし、逆にちゃんと見ていてくれるという安心感さえありました。

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皆さんにとって学校はどんな場所でしょうか。私が小さい頃に感じていたように安らげる場所、落ち着ける場所になっていてほしいなあと願っていますし、皆さん自身でそんな場所にしてほしいと願っています。

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そのために、まずは隣にいる子の心を温かく照らしてあげてください。「ちゃんと目を見てお話しする」「あいさつする」「笑顔で接する」こんな些細なことでいいのです。先日、私は朝の見回りで運動場を歩いていたら、幼稚園の子が私のところにトコトコと歩いてきて私の前に立ち止まりました。「どうしたの?」と尋ねると、「この間、幼稚園に来てくれてありがとう」とぺこりと頭を下げてそのまま走り去っていきました。これだけのことですが、この日一日、私はとても幸せな気持ちで過ごすことができました。

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さらに言えば、目の前にいない人のことまで想像できる子になってほしいと思います。自分が使ったトイレのスリッパをそろえておく、教室や廊下にゴミが落ちていたらそっと拾っておく、そうすることで、次にトイレを使う人や廊下を通った人がいい気持ちになります。

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「自分さえよければ‥」という気持ちで生活していると、結局、周りの人も自分に優しくしてくれなくて、自分自身も嫌な気持ちで生活しなければなりません。ぜひ、3学期はお互いに、学校を「より落ち着ける」「より安らげる」場所にしていってください。

これで、始業式の私の話を終わりにします。

集団も個人も成長できた実り多き2学期に(2学期終業式)

2024年12月20日

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改めまして、おはようございます。今回もテレビ越しではありますが、しっかり聞いてくださいね。

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今日で78日間登校した2学期も最終日となりました。

2学期始業式の際に、私は「集団に支えられて一人ひとりは成長するし、一人ひとりの成長が集団をより良くする」とお話ししました。2学期は、集団も個人も成長できた実り多き学期になりました。ここで少しだけ振り返ってみたいと思います。

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2学期は台風・大雨の直撃の始まりですごい幕開けになったなあと思いましたが、その後の学校生活は、1学期以上に落ち着いて生活する皆さんの姿を見て安心しました。

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この2学期は、皆さんにとって多くの活躍の機会がありました。運動会や持久走大会では全力で取り組むだけでなく、お互いを応援する姿も見られました。

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9月5日にはジュビロ磐田の中村駿選手が来校してくださいました。さらには、多くの児童会行事も行われました。代表委員会では、学校をより良くするためにどうしたらよいかを真剣に話し合いました。ふれあい遊びやキラキラ田原っ子発表会では、お互いを思いやる優しさも随所に見られ、うれしく感じました。

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各学年でもいろいろな活動を行いました。まず、低学年の取組の一部を紹介します。

1年生は生活科の時間に考えたお店屋さんごっこで園児と触れ合いました。

2年生はまち探検に行き、地域の大人の人にもきちんと挨拶したり質問したりすることができました。

3年生は枝豆の収穫も行いました。みどりの会の方々にもご協力いただき、立派に育った作物を収穫する喜びを味わいました。

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次は高学年の取組の一部を紹介します。

4年生は総合で様々な福祉体験を行いました。この写真は、実際に車いすに乗ったり押したりしているものです。

5年生は食育の関係で出汁を作って味わうということをやりました。この様子はテレビでも放送されましたので見た人も多いかと思います。

6年生はふるさと歴史探検に行きました。地域の歴史について、テーマをもって積極的に調べました。

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ほほえみのクラスでも、様々な体験活動を行いました。

ここでは、サツマイモほりの様子と、おもちゃ屋さんの様子を紹介しています。おもちゃ屋さんでは、幼稚園の子どもたちに優しく教える姿も見られました。

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学ぶことは「変わる」ことであり、「心が強くなる」ことでもあります。人はいろいろなことを知り、いろいろなことができるようになるたびに、自信をつけ、成長し、深い考えができるようになります。

先程の3人の代表の子たちの発表からも分かる通り、この2学期の皆さんの成長は、本当に目を見張るものがあります。夏の頃とは「変わったなあ」と思います。

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さて、これから17日間の冬休みが始まります。冬休みは、新年を迎える特別なお休みでもあります。皆さんのおうちでも大掃除や初詣をする人は多いのかなと思います。大掃除によって場を清めるとともに自分の心も清められればと思いますし、初詣では新しい時のめあてをしっかりと立てられるといいですね。

さらには、1年間の感謝を込めて、身の回りのお世話になった方々に、「今年もありがとうございました」「来年もよろしくお願いします」と、きちんとご挨拶をしましょう。そして、さようならの代わりに、「良いお年を」と言ってお別れするのも、年末の特別な挨拶です。

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では、1月7日には全員そろって笑顔を見せてくださいね。以上で終業式のお話を終わります。

市長及び議員団の皆様が視察された際の説明について

2024年11月8日

11月5日(火)には市議会議員団(志政会)の皆様が、6日(水)には市長様が「チーム担任制」の視察のために来校していただきました。その際に、校長から説明したことのうち、抜粋してお知らせします。

1 問題の所在

子どもたちの「いい顔」を増やすために「チーム担任制」を検討しようと思ったのには、いくつかの理由があります。そのことを「問題の所在」として、4つにまとめました。

問題1

まず1つ目は、「リスクに強い学校」にしたいとの思いです。現在の学校教育におけるリスク要因の一つとして、様々な課題を抱える子どもや保護者への対応を挙げることができます。授業が何となく成立しづらいといった程度から学級崩壊など重いケースまであるでしょう。本校も、いつ何時、そのような状況に陥るとも限りません。

したがって、リスクマネジメントの一環として、そうならない仕組みを平常時から整えておく必要があると考えたのです。

問題2

2つめの問題の所在は「学級担任制の限界」を感じているということです。

現在も不登校やいじめ、問題行動などが起こると、生徒指導主任を中心にケース会議を行い、当該保護者への対応は担任だけでなく教頭や教務主任等も加わり、まさに組織で対応しています。いわばそういったことは事後対応の一環でしかありません。

学級担任はケース会議にかけるまでに、一人きりでその子どものことを考え試行錯誤しているはずです。「いい考えが浮かばない」「何をやってもうまくいかない」と悩みぬいていることでしょう。学級担任でなければ当該児童の深い部分が見えないし当事者になれない、単学級だから結局授業づくりも一人で考えるしかないというのは、やはり危険をはらんだ脆弱な組織と言わざるを得ません。担任一人で悩む時間をできるだけ少なくし、問題が限りなく小さなうちから複数の教員でどんな手を打てるかを検討できればリスク軽減につながるのではないかと考えました。

問題3

3つ目の問題の所在として「新鮮な気持ちで学習・生活をさせたい」という思いです。

本校は、ここ数年の中で、児童数減少のため、2学級から1学級になった学年が複数あり、そういった学年の保護者からも生活面で「トラブルが多くなった」、学習面で「授業中、クラスの落ち着きがないように感じる」などの不安の声があがることがありました。

30名を超える子どもたちと1人の先生が「教室」という狭い空間で一日を過ごすとどうしても空気(雰囲気)が澱んでくることもあります。そこで、学級の中に人の流れを作ることで、新鮮な気持ちで学習・生活ができるのではないかと考えました。

問題4

4つ目の問題の所在として、学校評価アンケートでの保護者の意見を挙げることができます。子ども自身が学習内容や学習方法を考えて進んで学習に取り組む姿に課題があると感じているようです。

さらに、自由記述欄には「確実に理解できていないことが多々見受けられる」と不安を抱く方もいて、「友達や先生と意見を伝えあう学習スタイル」「理解度別の学習や少人数の行動の機会」を増やしてほしいとの思いも複数の保護者が抱いていることが分かりました。

2 実践の中で共通理解を図ったこと

システムを実際に運用するのは教員一人ひとりであり、最終的には教員の意識がチーム担任制の成否に大きくかかわることは言うまでもありません。そこで、次の3つのことについて全職員で共通理解を図ることとしました。

共通理解

1つ目に「隣の学級」の意識を捨てるということです。

これまで学級担任制による教育実践を積み重ねた小学校教員にとって「隣の学級」での指導方法に対して簡単に口出しできないとの思いも働くものです。ついては「隣の学級」との意識を捨て、早い段階から子どもの見方や指導・支援方法を話し合える職員風土の醸成をみんなでつくっていくことが大事です。

2つめは「広く・深く」の情報共有です。

多くの職員が子どもとかかわるだけでは「広く・浅く」の子ども理解になってしまいます。いかに職員が知り得たことを共有できるかがチーム担任制の成否のカギとなります。教員が教室を移動する際や放課後など短い時間はもとより1週間の中で1~2度は「チーム情報共有会」を放課後に設定しています。

3つめは、対等な立場で話し合うということです。

ベテラン教員に若手教員が教われば良いとかベテラン教員の指示を受けていれば良いなどの考えはチーム担任制を推進するうえで弊害となる考え方です。指導の場ではベテランも若手もなく、対等に語り合うことが重要です。

職員には、バスケットボールに例えて、次のように話したこともあります。

「学級担任制が「マンツーマンディフェンス」ならば、チーム担任制は「ゾーンディフェンス」である。誰が誰を守るかではなくて、チーム職員で協力してチーム内の子どもたちを守る」と。

3 実践の中で見えてきた成果と課題

(1)成果

成果1

成果の一つ目として、1学期末に行った学校評価アンケート結果のうち「教員の声」を紹介しておきます。

授業については、「特定の授業に特化でき、教材研究に集中できる。」「子どもたちは担任が変わることを不安に思う子もいたが、徐々に慣れ、色んな先生との関わりを楽しんでいた。」といった声がありました。

合同授業(異学年交流)では、「子供たちが少し大人になり、教師からの指導が少なくなる。」「上の学年は分かりやすく説明し、下の学年は一生懸命聞こうとすることができた。」「子ども同士、お互いの顔と名前が分かる関係ができつつあるようで嬉しい。」という声が聞かれました。

生徒指導面では「チームで対応できたことで、児童や保護者の考えを多面的に考え対応できて良かった。」「みんなで対応してくれ、1人じゃない安心感があった。」という声がありました。

成果2

2つ目の成果として、子ども同士のトラブルや不登校について挙げておきます。

令和6年度は全校児童が学校に足が向いています。教科担任制(交換授業)によりいろいろな先生と授業できることを楽しみにしている、学級担任以外の先生からも休み時間や昼休みに声をかけてもらえることで安心感を得ている、学級内の狭い人間関係だけでなくいろいろな子どもと触れ合えることで楽しさを感じるなど、要因は様々あるでしょう。

さらに、子ども同士のトラブルがあった場合は、組織体制で取り組み、節目の時には管理職等を含めたケース会議を実施することとしていますが、今年度に入ってからケース会議を実施することもほとんどなくなりました。これは前述のとおり子どもたちが学校生活を楽しめており精神的な不安定さが軽減したためトラブル自体が減ったこともあるでしょう。そのことに加えて、トラブルが小さいうちにチーム職員が気づいて早期対応を行うことが可能になったことも大きいと感じています。

成果3

3つ目の成果として、「アセス」による学級全体の子どもをプロットした表を見ても一目瞭然です。ある学級の学級内分布表を紹介します。

表中オレンジの部分は「要学習支援領域」「要対人支援領域」とある通り、何らかの個別支援が必要な子どもがこの中にプロットされることになります。資料の左が1回目、右が2回目の結果ですが、支援が必要な子供が減り、学習・生活ともに満足感が高まった子供が増えています。

(2) 課題

これまで成果と捉えられることを述べてきましたので、課題も申し上げておきたいと思います。

課題1

子どもたちから「先生によって色々ルールが違うので統率してもらいたいところがある」といった学習や生活上のルールなどそろえてほしいという意見がありました。

こういった声が出ることは予め想定していたことなので昨年度末に考えうる事項については指導部会で検討したうえで学校運営をスタートさせましたが、子どもたちからはまだまだ統率できていないと感じることがあるようです。今後も検討を重ねていく必要を感じています。

課題2

2つ目の課題として、「最後は教師の意識にかかっている」ということです。

子どもの抱える課題は複雑化しており、家庭や地域といった子どもを取り巻く環境も多様化しており、学校教育が抱える課題は今後もますます難しくなることが予想されます。

そのために、これからの学校は①1人の教師だけにその課題を背負わせないシステム(環境)づくり とともに、②個々の教師が高度な専門性に裏打ちされた自由な発想と柔軟性を持ち合わせることの両輪が必要であると考えます。

チームでやるから個人は埋没しても良いなどという話はないのです。個の教師が授業で子どもと勝負する、学校生活全般を通じて気になる子どもの心と会話する、そういった意識を強く持ち、プロとしてスキルを高め続ける気概を持ち続けてほしいと願っています。

4 おわりに~私たちの取組を一言で申し上げると・・

おわりに

私たちの取組を一言で申し上げると、人と人の「つながり」を意識することで、子どもたちの「いい顔」をつくるということに尽きます。

先生と子どもとのつながりは教務主任が中心に教科担任制を充実してくれました。子ども同士のつながりは新たな時間割に基づいてチーム内で検討して合同授業を進めてくれています。さらには先生同士のつながりはチームリーダーが中心になり情報共有会を進めてくれています。

今後もよどみなく、緊張感をもって全職員で取り組んでいきたいと思います。

子どもたちに「朝の力」を~就学時健診での校長挨拶

2024年10月23日

足元の悪い中、就学時健康診断においでいただきありがとうございました。今日から二十四節気の「霜降(そうこう)」に入ったとのことで、朝晩は少し冷え込むようになりましたね。皆様は季節の変わり目、お体大丈夫でしょうか。そして、ここまでの子育てについても本当にお疲れ様です。私にはとうに成人を過ぎた2人の娘がおりますが、子育ては苦労の連続で、今でも心配の種は尽きないというのが実感です。ぜひ4月からは、そういった保護者の皆様の悩みも私たちは共有できたらいいなと考えています。

さて、本日の就学時健康診断は、学校保健安全法という法律で定められた、入学前にお子さんの健康状態について知る上で大切なものであります。学校医の先生方に御尽力をいただき、進めてまいります。もし“治療のすすめ”を受け取られたら、早めに病院にかかって治すようお願いします。

ここで学校のこともお話ししたいところですが、学級数も1学級か2学級かはっきりしない状況でして、入学説明会の折にはもう少しはっきり言えるかなと思います。ただしはっきりと申し上げられるのは、本校は「チーム担任制」と言いまして学級担任だけでなく、多くの教員の目で子どもたちを見ていく体制を取っておりますのでその点は安心していただければと思います。

今の時点で、保護者の皆様にお願いしたいこととして、子どもたちに「朝の力」をしっかりつけておいてほしいということです。「朝早く起きる」「朝ごはんをしっかり食べる」「朝の挨拶をしっかりする」ことの3つです。生活習慣をしっかり整えて、学校でしっかり活動できる素地を作っていただくことに加え、人とかかわる上での潤滑油にもなる「あいさつ」を自分からできる子どもになるよう、保護者の皆様に意識をもっていただけると嬉しいです。

さあ、あと5ヶ月余りでお子さんも小学生となります。お子さんにとっての何よりの薬は、お父さんやお母さんの笑顔です。もしも今後入学に当たって,成長・健康に関することや学校生活について心配なことがありましたら,何でもけっこうですのでお気軽にご相談ください。以上、就学時健康診断における私の挨拶とさせていただきます。

集団に支えられてこそ(2学期始業式の話)

2024年8月29日

みなさん、改めましておはようございます。終業式の日には「この夏休みは2学期に向けての「準備」のための大事な時間」とお話ししましが、皆さんにとって36日間の夏休みはどんな時間になりましたか? 

さて7月26日から8月11日の間、フランスのパリでオリンピックが行われ、世界中の人々が感動と興奮に包まれました。私もこの期間中はテレビの前でずっと応援していました。

きっと選手の皆さんは、これまでの長い時間を、オリンピックで最高のパフォーマンスをするためだけに費やしてきたのでしょう。遊びたいと思ったことも、おいしいものを食べたいと思ったこともきっとたくさんあったでしょうけど、それらすべてを我慢してオリンピックにかけてきたことは、試合後の大粒の涙からも、誰にも容易に想像できることでしょう。

さらには、選手のパフォーマンスを最高のものに引き上げるためになくてはならないものとして「声援・応援」を挙げることができるでしょう。同じチームの選手やコーチとの声掛けやハグはもとより、会場の一体となった地響きのような応援が、選手の背中をグイっと押してくれたことは間違いないでしょう。

でも、こういったことはオリンピックのような特殊な世界の中だけでなく、私たちの普段の学校生活の中にもあるのです。先程の代表の子の言葉通り、みんなの中にも「2学期はこれを頑張りたい」「2学期のうちにこういうことをできるようになりたい」と心に誓っていることの一つや二つはあることでしょう。そういったことに人知れず努力するのは当然のことですが、その努力が花開くかどうかは実は学級や学年のまわりの友達の温かな応援によるところも大きいと思うのです。

集団に支えられてこそ、一人ひとりは成長するものですし、皆さん一人ひとりの成長が学級や学年といった集団をより良いものへと発展させるともいえるのです。そう考えると、「自分だけ成長できればいいや、周りはどうなってもいい」というのは勿体ない考え方なのです。自分は周りのみんなのことを精一杯応援するし、自分のことも周りのみんなに応援してもらおうと考えることが成長への近道だと言えるでしょう。
2学期は学校に来る日が78日間あります。これだけの期間頑張れば、2学期の終わりには、もう今とは別人のように大きく成長することができると思います。自分も友達も一緒に助け合い、高め合える、そんな時間を過ごしてほしいと願っています。

これで始業式での私の話を終わります。

1学期終業式のお話~心身一如

2024年7月23日

改めましておはようございます。本当は、皆さんに直接、お話できればよかったのですが、体育館はとても暑いので、空調のきいた教室で私の話を聞いてもらうことにしました。

4月の始業式の日には、私は皆さんに、「自分からいろんなことにチャレンジしてほしいということ、さらには相手がどう思っているかを想像する「優しさ」を持ってほしいこと」の2つをお話ししました。

この1学期間を見ていると、昨年度以上に皆さんが夢中になって何かに取り組む姿を多く見られましたし、授業に集中している様子もたくさん見させてもらいました。とても成長を感じたし私も嬉しい気持ちになることが多い1学期だったと思います。

さて、鎌倉時代、曹洞宗を開いた道元というお坊さんは「心身一如(しんしんいちにょ)」と言う言葉を残しています。これは、心と身体はつながっていて、互いに影響し合っているという意味です。「身体がまっすぐならば心もまっすぐ。身体が曲がっていれば心も曲がっている。」ということです。授業中もピシッとしており、普段の生活でもほかの子に優しくできるというのは、それだけ心がまっすぐに成長していることの表れということなのです。

この後、皆さんは担任の先生から「あゆみ(通信票)」をいただきます。先生たちも皆さん一人ひとりの努力や成長を形にしようといろいろ考えてくれていましたが、中には「ぼく(わたし)は本当はもっとがんばったのになあ」とあゆみを見てちょっとがっかりする子もいるかもしれません。でもよく考えてみてください。皆さんはがんばって、確実に成長の「タネ」をまいたのです。皆さんの中には、すでにその「タネ」が地面から芽を出し、長い茎を出し、大きな花を咲かせた子もいるでしょう。その子は担任の先生から見ても「ああ、大きな花が咲いたなあ、立派に成長したなあ」と分かるからあゆみにも書きやすいでしょう。でも、まだ地面の中でしか芽が出ていない場合は外から成長は見えにくいので、あゆみにも示せていないだけかもしれません。皆さんは成長の「タネ」をまいたことに対して自分で自分のことをしっかりとほめてあげればいいのです。頑張ったことが形になるのは、人によって速さが違うのですから、他の人を羨む必要もありません。

さて、明日から36日間の夏休みに入ります。この夏休みは2学期に向けての「準備」のための大事な時間でもあります。2学期は運動会をはじめいろんな行事があり1年の中で最も成長できる時期ではあるのですが、多くの実りを得るためには、この夏休みにいろいろな経験をしておくことが大事です。私も小さい頃を振り返ると、初めて25mを泳げるようになったのも夏休みだったし、はじめて自転車に乗れたのも夏休みでした。自分のための成長のタネをまけるのも夏休みの良いところです。皆さんはこの夏休みにどんなチャレンジをしますか。2学期の始業式(8月29日)に、元気な笑顔で会えることを楽しみにしていますし、どんなチャレンジをしたかも教えてください。

懇談会前のお時間をいただいて‥(主に「チーム担任制」に関するお話)

2024年4月27日


本日は、懇談会の前の時間を少しいただいて、本年度の学校運営(主に「チーム担任制」に関すること)についてお話させていただきます。昨年度末の入学説明会や懇談会の折にお話したことをもう少し深堀りした内容だとご理解ください。なお、学校で目指す子どもの姿などについては、この資料を用いて昨年度の入学説明会及び懇談会の折にお話させていただきましたので、時間の関係上、ここでは重複は避けることにします。



本校の現状について少しお話をさせていただきますと、今年度33名の1年生が入学し、全校で220名の児童がともに学ぶことになります。直近4年間の児童数と学級数の推移を表したものを見ると、学級数は年々減少しており、4年生と5年生は途中で2学級から1学級になっていることが分かります。
静岡県の基準では1学級当たりの児童数の上限は35人となっています。1学級となっている学年はすべて上限ぎりぎりであり、教室が狭く感じます。来年度はすべての学年で1学級になる可能性もあり、教員数は減りますが、1学級当たりの人数は増えるという状況になります。



本年度重点項目の一つとして、「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくりを整えたい」と話しました。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態を「学級担任制」と呼ぶならば、このことに加え、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる「チーム担任制」を取り入れたいと考えています。


学校だよりでも書きましたが、30名を超える子どもたちと1人の先生が「教室」という狭い空間で一日を過ごすと、水槽の中の水ではありませんが、どうしても空気(雰囲気)が澱んでくることもあります。そこで、学級の中に人の流れを作ることで、新鮮な気持ちで学習・生活ができると考えます。
先日の新聞記事の中で、静岡市教委が市内2小学校を「チーム担任制」研究校に指定したとの記事が掲載されていました。その中に「同じ子どもと接する時間が長い分信頼関係が築けるが、一度崩れた時の修復が困難で小学校こそ子どもたちを多面的に見守る必要がある」と書かれていました。私もまったく同感です。


昨年度の私の話の後、「理念は分かるが、具体的にどのように進んでいくのか見えなくて不安」とのお声もいただきました。もっともなことだと思います。そこで、田原小学校流のチーム担任制を一言で申し上げるならば、教科担任制と合同授業と学級担任チェンジのハイブリッドな取組であると言えます。


教科担任制は、現在も中学校で実施される方法ですのでイメージはしやすいでしょう。それでも1年生と6年生では他の先生が入る頻度が違うことが一目見てわかると思います。ただし、中学校や高校では教科が決まると一年間固定ですが、私たちは先ほども申しましたように、学年中途で教科担当を交換することも可能性として考えています。



合同授業については、例えば1年生と2年生が同じ時間に体育や図画工作を行い、準備運動を2年生が1年生に教えたり、一緒に話し合って作品を作ったりという取組を行っていました。さらに、6年生が5年生に対して観音山宿泊体験について必要なことをレクチャーすることなども考えられます。このように時間割を柔軟に変更することで、合同で授業することも可能になりますし、少人数での授業も可能になります。



最後の学級担任チェンジはすでに昨年度の終わりに試行で行っていますので2年生以上の方々には説明は必要ないのかもしれません。1年から3年までの低学年部と4年から6年までの高学年部の2つのチームとして、その中で担任を交代していきます。朝の会や帰りの会のみならず、給食から昼休みにかけてお話したり遊んだりすることで、担任以外の先生とも仲良くなれるチャンスととらえてくれると嬉しいです。


ハイブリッドな取組と申しましたが、どの取組をいつ行うのかは、機械的に「1週間ごとに担任を交代する」などと決めるのでなく、チームリーダーを中心に、チーム職員が子どもたちの様子を見ながら決めていきます。
学校の枠に子どもを合わせるのでなく、子どもの実情に合わせてできるだけ学校の環境を柔軟に変化させる「流体」組織を目指すという私たちの思いを具現化するものです。



こういった取組の目指す先にあるのは、学習や生活がより魅力的なものになり、子どもたちの「いい顔」であふれる姿です。
学習面で言えば、教員も得意な教科とそうでない教科はあります。得意教科を中心に子どもたちに授業を展開することで、子どもたちもよりワクワクとした気持ちで「分かりたい」「できるようになりたい」という気持ちを満足することができると考えます。
生活面では、これまで以上に多くの先生とかかわり、子ども自身も気づかなかった良さや可能性に気づくことが期待できます。さらに、学級担任が近くにいることで、子どもたちもついつい学級づくり(より良い集団作り)さえも学級担任に任せてしまう傾向があります。しかし、いろいろな先生が学級の中に入ってくることで、子どもたちにも「見られている」という感覚を持ってもらい、自分たち自身でより良い関係を築こうという意識を持ってほしいと考えます。


どれだけ崇高な理想を掲げようとも、そのことで子どもたちや保護者の皆様の不安感が増すのは論外です。学校だよりでお知らせしたとおり、職員間の情報共有、子どもたちだけでまとまりのある集団を作れること、保護者が相談しやすいようにすることなど検討を重ねています。
2学期の希望面談の際には窓口担任以外のチーム職員ともお話をしていただけるように用意を進めています。多くの目で見ると子どもをより多面的にとらえることができることが実感していただけることを期待しています。
さらに3学期には地域公開日を土曜日に設定してみました。保護者のみならず、これまで様々な機会に子どもにかかわっていただいた地域の方々にも、子どもたちの姿をもってチーム担任制の成果をお見せしたいと考えています。


あと一言だけ、お付き合いください。
チーム担任制を職員とともに模索し始めた昨年7月から、私はたびたび20年前の私と会話し続けています。20年前の私は学級担任として熱意と自信をもって子どもたちと向き合っていました。
20年前の私は、きっと「学級担任として子どもたちとかかわりたいから小学校教員になった。でも、チーム担任なんてなったらやりがいを感じないのではないか。」と言うでしょう。
さらに「自分の学級を他のどの学級より良くすることが自分の役割。だから他の先生は皆ライバルだし、職員室でも必要最低限のことだけ喋ればいい。職員室でお互いに切磋琢磨しあえば、いい学校になるんじゃないの?」」とも言うかもしれません。
20年前の私を全否定するつもりはありませんが、今の私から見ると結局、先生のイメージの中に子どもを閉じ込めていただけじゃないのか?子どもたちに自由に考えさせ、先生の発想を上回るような子どもたちの思いを引き出すことができていなかったのではないか?そもそも20年前の私の考えは自己満足に過ぎず、学校全体の雰囲気をよくすることに寄与していなかったのではないか?などと思うことがあります。



本校のチーム担任制は途に就いたばかりですが、職員室の雰囲気は活気があるし、子どもたちの表情も大変明るい、いい風が吹いているように感じます。温かく見守っていただけると嬉しいですし、家庭での会話の中で「もっとこうした方が‥」とのアイディアがあれば何でも教えてください。以上、私のお話にお付き合いいただきありがとうございました。