田原小学校が目指そうとしていること(入学説明会にて)
2025年2月4日 13時14分お時間をいただきまして、本校が今年度取り組んできたことや今後目指そうとしていることについてお話しさせていただければと思っています。
まず、本校職員の使命ととらえる「田原っ子をいい顔にすること」を「学校経営目標」に示し、何が「いい顔」かと問われれば、学校教育目標の「ゆめに向かい 本気で取り組んでいる」ときの顔だと考えています。
「ゆめ」とは「日々の授業や単元を通してできるようになりたいこと」「なりたい自分に向かって、日々目指していくものやこと」という自分自身に関するものに加え、「こんな学級にしたい」「こんな行事にしたい」という自身が所属する学級や学校に関するものと捉えています。さらに、「本気」とは、「熱中する」「一生懸命」に留まらず、うまくいかない、思ったようにできないときに簡単にあきらめない姿を目指しています。
本校の現状について少しお話をさせていただきます。1年1組は32名となり、全校で210名の児童がともに学ぶことになります。直近の児童数と学級数の推移を表したものを見ると、学級数は年々減少しています。静岡県の基準では1学級当たりの児童数の上限は35人となっているため。1学級となっている学年はすべて上限ぎりぎりであり、教室が狭く感じます。
本校は、これまで「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくり」を整えてきました。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態を「学級担任制」と呼ぶならば、本校は、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる「チーム担任制」を取り入れています。
チーム担任制本来の目的は子どもの主体性を伸ばし、子ども色のクラスを造ることにあります。子どもが学級担任一人に頼り切るのではなく、自主的・自治的風土を醸成するとも言い換えられます。
田原小学校流のチーム担任制を一言で申し上げるならば、「教科担任制」と「合同授業」と「担任ローテーション」のハイブリッドな取組であると言えます。さらにこのことがうまく機能するために、全職員で次の3つのことについて共通理解を図ることとしました。
1つ目に「隣の学級」の意識を捨てるということです。隣の学級に簡単に口出しできないとの意識を捨て、早い段階から子どもの見方や指導・支援方法を話し合える職員風土の醸成をつくっていきます。
2つめは「広く・深く」の情報共有です。多くの職員が子どもとかかわるだけでは「広く・浅く」の子ども理解になってしまいます。いかに職員が知り得たことを共有できるかがチーム担任制の成否のカギとなります。教員が教室を移動する際や放課後など短い時間はもとより1週間の中で1~2度は「チーム情報共有会」を放課後に設定しています。
3つめは、対等な立場で話し合うということです。ベテラン教員に若手教員が教われば良いとかベテラン教員の指示を受けていれば良いなどの考えはチーム担任制を推進するうえで弊害となる考え方です。指導の場ではベテランも若手もなく、対等に語り合うことが重要です。
本年度は、1年生から3年生までを「低学年チーム」、4年生から6年生までを「高学年チーム」として取り組んできました。学校評価アンケート結果のうち、「学校が楽しいと感じる」は子どもも保護者も学期を経るごとに肯定値が高くなっています。
子どもたちは、「話せる先生が増えて嬉しい」「私が困っているのに気づいてくれて嬉しい」「授業が楽しみになった」「授業の内容がよく分かる」などに加え、「もっといろんな先生とやりたい(同じ先生の授業が多い気がする)」などという意見もあるほどです。
保護者からも「たくさんの先生が子供のことを知ってくれるという安心感がある」「『先生のようになりたい』と思える理想像が増え大人への夢を描けるので良い」といった意見がある一方で、少数ではありますが、「1人の職員が100名近い子どもを把握できるのか」「誰に相談して良いかわからず混乱する」といった不安を抱く方がいることも事実です。
チーム担任制の3つの取組のうち「合同授業」の一部を紹介します。1年生と2年生が合同で生活科「学校探検」を計画して実行しました。2年生がいつも違うお兄さんお姉さん顔になっています。5年生が4年生の教室に行き、ミニ先生になって算数を教えるといったことも行っていますし、6年生が5年生に対して観音山宿泊体験に関するガイダンスも行いました。これらの取組により、「いろいろな学年の子とかかわりがもてている」については、2学期に大きく数値を伸ばしていることがわかります。さらにコミュケーションの基本である挨拶に関する数値も高くなっていることがわかります。
次に教科担任制の取組についてもふれておきます。中学校以降はこの「教科担任制」が普通ですので、保護者の方々にもなじみ深いと思います。職員の反応として、「特定の授業に特化でき、教材研究に集中できる。」「子どもたちは担任が変わることを不安に思う子もいたが、徐々に慣れ、色んな先生との関わりを楽しんでいた。」など前向きなものが大半でした。
「授業で学習したことはよく分かる」と答える子ども、「先生は子どものことを理解して指導にあたっている」と答える保護者の割合も2学期末の方が高くなっています。
現在、全職員で来年度の教育課程について話し合っています。その中で、「チーム内の職員数が多い」「3年生と4年生は同じチームの方が運営上効果的である」などの課題が出されました。先程も申しました通り、教師が子どもを理解できるか、保護者がどの教員に相談してよいかなどの保護者からの不安の声もあります。そこで、「2学年編成のチーム」を前向きに検討したいと考えているところです。こうすることで、チーム内の2人の職員は、ともに「主担任」という位置づけになります。子どもたちには、「自分の学級に担任の先生が2人できた」と思ってもらえれば、より相談しやすい安心感を高めることができると考えています。教員側からしても、 以前と比べ一人の職員が把握すべき子どもの数が減少することで、深い子ども理解の実現に近づけるでしょう。
深い子ども理解を図るためには「交換授業」と「担任ローテーション」の両方が必要です。授業での様子と休み時間などの学級内の友達同士のかかわりの両方の姿を細かく観察し、子どもと接する機会を増やすことが深い子ども理解につながります。
特定の教科において、チーム内2人の職員の交換授業を行うことで、どちらの職員も授業中の子ども一人ひとりの表れを理解するとともに、子どもと話しやすい関係づくりを構築します。
授業での子ども理解や子どもとの人間関係を築いたうえで、担任ローテーションを定期的に実施します。ここでは授業以外の友達同士のかかわりを観察するとともに、関係の乱れ(いじめや落ち着きのなさなど)が見られたら早めに指導を行うことを目的とします。
終わりになりますが、私たちの取組を一言で申し上げると、人と人の「つながり」を意識することで、子どもたちの「いい顔」をつくるということに尽きます。
先生と子どもとのつながりは教務主任が中心に教科担任制を充実してくれました。子ども同士のつながりは新たな時間割に基づいてチーム内で検討して合同授業を進めてくれています。さらには先生同士のつながりはチームリーダーが中心になり情報共有会を進めてくれています。
今後もよどみなく、緊張感をもって全職員で取り組んでいきたいと思います。長い時間、お聞きいただきありがとうございます。