本日は、懇談会の前の時間を少しいただいて、本年度の学校運営(主に「チーム担任制」に関すること)についてお話させていただきます。昨年度末の入学説明会や懇談会の折にお話したことをもう少し深堀りした内容だとご理解ください。なお、学校で目指す子どもの姿などについては、この資料を用いて昨年度の入学説明会及び懇談会の折にお話させていただきましたので、時間の関係上、ここでは重複は避けることにします。
本校の現状について少しお話をさせていただきますと、今年度33名の1年生が入学し、全校で220名の児童がともに学ぶことになります。直近4年間の児童数と学級数の推移を表したものを見ると、学級数は年々減少しており、4年生と5年生は途中で2学級から1学級になっていることが分かります。
静岡県の基準では1学級当たりの児童数の上限は35人となっています。1学級となっている学年はすべて上限ぎりぎりであり、教室が狭く感じます。来年度はすべての学年で1学級になる可能性もあり、教員数は減りますが、1学級当たりの人数は増えるという状況になります。
本年度重点項目の一つとして、「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくりを整えたい」と話しました。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態を「学級担任制」と呼ぶならば、このことに加え、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる「チーム担任制」を取り入れたいと考えています。
学校だよりでも書きましたが、30名を超える子どもたちと1人の先生が「教室」という狭い空間で一日を過ごすと、水槽の中の水ではありませんが、どうしても空気(雰囲気)が澱んでくることもあります。そこで、学級の中に人の流れを作ることで、新鮮な気持ちで学習・生活ができると考えます。
先日の新聞記事の中で、静岡市教委が市内2小学校を「チーム担任制」研究校に指定したとの記事が掲載されていました。その中に「同じ子どもと接する時間が長い分信頼関係が築けるが、一度崩れた時の修復が困難で小学校こそ子どもたちを多面的に見守る必要がある」と書かれていました。私もまったく同感です。
昨年度の私の話の後、「理念は分かるが、具体的にどのように進んでいくのか見えなくて不安」とのお声もいただきました。もっともなことだと思います。そこで、田原小学校流のチーム担任制を一言で申し上げるならば、教科担任制と合同授業と学級担任チェンジのハイブリッドな取組であると言えます。
教科担任制は、現在も中学校で実施される方法ですのでイメージはしやすいでしょう。それでも1年生と6年生では他の先生が入る頻度が違うことが一目見てわかると思います。ただし、中学校や高校では教科が決まると一年間固定ですが、私たちは先ほども申しましたように、学年中途で教科担当を交換することも可能性として考えています。
合同授業については、例えば1年生と2年生が同じ時間に体育や図画工作を行い、準備運動を2年生が1年生に教えたり、一緒に話し合って作品を作ったりという取組を行っていました。さらに、6年生が5年生に対して観音山宿泊体験について必要なことをレクチャーすることなども考えられます。このように時間割を柔軟に変更することで、合同で授業することも可能になりますし、少人数での授業も可能になります。
最後の学級担任チェンジはすでに昨年度の終わりに試行で行っていますので2年生以上の方々には説明は必要ないのかもしれません。1年から3年までの低学年部と4年から6年までの高学年部の2つのチームとして、その中で担任を交代していきます。朝の会や帰りの会のみならず、給食から昼休みにかけてお話したり遊んだりすることで、担任以外の先生とも仲良くなれるチャンスととらえてくれると嬉しいです。
ハイブリッドな取組と申しましたが、どの取組をいつ行うのかは、機械的に「1週間ごとに担任を交代する」などと決めるのでなく、チームリーダーを中心に、チーム職員が子どもたちの様子を見ながら決めていきます。
学校の枠に子どもを合わせるのでなく、子どもの実情に合わせてできるだけ学校の環境を柔軟に変化させる「流体」組織を目指すという私たちの思いを具現化するものです。
こういった取組の目指す先にあるのは、学習や生活がより魅力的なものになり、子どもたちの「いい顔」であふれる姿です。
学習面で言えば、教員も得意な教科とそうでない教科はあります。得意教科を中心に子どもたちに授業を展開することで、子どもたちもよりワクワクとした気持ちで「分かりたい」「できるようになりたい」という気持ちを満足することができると考えます。
生活面では、これまで以上に多くの先生とかかわり、子ども自身も気づかなかった良さや可能性に気づくことが期待できます。さらに、学級担任が近くにいることで、子どもたちもついつい学級づくり(より良い集団作り)さえも学級担任に任せてしまう傾向があります。しかし、いろいろな先生が学級の中に入ってくることで、子どもたちにも「見られている」という感覚を持ってもらい、自分たち自身でより良い関係を築こうという意識を持ってほしいと考えます。
どれだけ崇高な理想を掲げようとも、そのことで子どもたちや保護者の皆様の不安感が増すのは論外です。学校だよりでお知らせしたとおり、職員間の情報共有、子どもたちだけでまとまりのある集団を作れること、保護者が相談しやすいようにすることなど検討を重ねています。
2学期の希望面談の際には窓口担任以外のチーム職員ともお話をしていただけるように用意を進めています。多くの目で見ると子どもをより多面的にとらえることができることが実感していただけることを期待しています。
さらに3学期には地域公開日を土曜日に設定してみました。保護者のみならず、これまで様々な機会に子どもにかかわっていただいた地域の方々にも、子どもたちの姿をもってチーム担任制の成果をお見せしたいと考えています。
あと一言だけ、お付き合いください。
チーム担任制を職員とともに模索し始めた昨年7月から、私はたびたび20年前の私と会話し続けています。20年前の私は学級担任として熱意と自信をもって子どもたちと向き合っていました。
20年前の私は、きっと「学級担任として子どもたちとかかわりたいから小学校教員になった。でも、チーム担任なんてなったらやりがいを感じないのではないか。」と言うでしょう。
さらに「自分の学級を他のどの学級より良くすることが自分の役割。だから他の先生は皆ライバルだし、職員室でも必要最低限のことだけ喋ればいい。職員室でお互いに切磋琢磨しあえば、いい学校になるんじゃないの?」」とも言うかもしれません。
20年前の私を全否定するつもりはありませんが、今の私から見ると結局、先生のイメージの中に子どもを閉じ込めていただけじゃないのか?子どもたちに自由に考えさせ、先生の発想を上回るような子どもたちの思いを引き出すことができていなかったのではないか?そもそも20年前の私の考えは自己満足に過ぎず、学校全体の雰囲気をよくすることに寄与していなかったのではないか?などと思うことがあります。
本校のチーム担任制は途に就いたばかりですが、職員室の雰囲気は活気があるし、子どもたちの表情も大変明るい、いい風が吹いているように感じます。温かく見守っていただけると嬉しいですし、家庭での会話の中で「もっとこうした方が‥」とのアイディアがあれば何でも教えてください。以上、私のお話にお付き合いいただきありがとうございました。