市長及び議員団の皆様が視察された際の説明について

2024年11月8日 10時20分

11月5日(火)には市議会議員団(志政会)の皆様が、6日(水)には市長様が「チーム担任制」の視察のために来校していただきました。その際に、校長から説明したことのうち、抜粋してお知らせします。

1 問題の所在

子どもたちの「いい顔」を増やすために「チーム担任制」を検討しようと思ったのには、いくつかの理由があります。そのことを「問題の所在」として、4つにまとめました。

問題1

まず1つ目は、「リスクに強い学校」にしたいとの思いです。現在の学校教育におけるリスク要因の一つとして、様々な課題を抱える子どもや保護者への対応を挙げることができます。授業が何となく成立しづらいといった程度から学級崩壊など重いケースまであるでしょう。本校も、いつ何時、そのような状況に陥るとも限りません。

したがって、リスクマネジメントの一環として、そうならない仕組みを平常時から整えておく必要があると考えたのです。

問題2

2つめの問題の所在は「学級担任制の限界」を感じているということです。

現在も不登校やいじめ、問題行動などが起こると、生徒指導主任を中心にケース会議を行い、当該保護者への対応は担任だけでなく教頭や教務主任等も加わり、まさに組織で対応しています。いわばそういったことは事後対応の一環でしかありません。

学級担任はケース会議にかけるまでに、一人きりでその子どものことを考え試行錯誤しているはずです。「いい考えが浮かばない」「何をやってもうまくいかない」と悩みぬいていることでしょう。学級担任でなければ当該児童の深い部分が見えないし当事者になれない、単学級だから結局授業づくりも一人で考えるしかないというのは、やはり危険をはらんだ脆弱な組織と言わざるを得ません。担任一人で悩む時間をできるだけ少なくし、問題が限りなく小さなうちから複数の教員でどんな手を打てるかを検討できればリスク軽減につながるのではないかと考えました。

問題3

3つ目の問題の所在として「新鮮な気持ちで学習・生活をさせたい」という思いです。

本校は、ここ数年の中で、児童数減少のため、2学級から1学級になった学年が複数あり、そういった学年の保護者からも生活面で「トラブルが多くなった」、学習面で「授業中、クラスの落ち着きがないように感じる」などの不安の声があがることがありました。

30名を超える子どもたちと1人の先生が「教室」という狭い空間で一日を過ごすとどうしても空気(雰囲気)が澱んでくることもあります。そこで、学級の中に人の流れを作ることで、新鮮な気持ちで学習・生活ができるのではないかと考えました。

問題4

4つ目の問題の所在として、学校評価アンケートでの保護者の意見を挙げることができます。子ども自身が学習内容や学習方法を考えて進んで学習に取り組む姿に課題があると感じているようです。

さらに、自由記述欄には「確実に理解できていないことが多々見受けられる」と不安を抱く方もいて、「友達や先生と意見を伝えあう学習スタイル」「理解度別の学習や少人数の行動の機会」を増やしてほしいとの思いも複数の保護者が抱いていることが分かりました。

2 実践の中で共通理解を図ったこと

システムを実際に運用するのは教員一人ひとりであり、最終的には教員の意識がチーム担任制の成否に大きくかかわることは言うまでもありません。そこで、次の3つのことについて全職員で共通理解を図ることとしました。

共通理解

1つ目に「隣の学級」の意識を捨てるということです。

これまで学級担任制による教育実践を積み重ねた小学校教員にとって「隣の学級」での指導方法に対して簡単に口出しできないとの思いも働くものです。ついては「隣の学級」との意識を捨て、早い段階から子どもの見方や指導・支援方法を話し合える職員風土の醸成をみんなでつくっていくことが大事です。

2つめは「広く・深く」の情報共有です。

多くの職員が子どもとかかわるだけでは「広く・浅く」の子ども理解になってしまいます。いかに職員が知り得たことを共有できるかがチーム担任制の成否のカギとなります。教員が教室を移動する際や放課後など短い時間はもとより1週間の中で1~2度は「チーム情報共有会」を放課後に設定しています。

3つめは、対等な立場で話し合うということです。

ベテラン教員に若手教員が教われば良いとかベテラン教員の指示を受けていれば良いなどの考えはチーム担任制を推進するうえで弊害となる考え方です。指導の場ではベテランも若手もなく、対等に語り合うことが重要です。

職員には、バスケットボールに例えて、次のように話したこともあります。

「学級担任制が「マンツーマンディフェンス」ならば、チーム担任制は「ゾーンディフェンス」である。誰が誰を守るかではなくて、チーム職員で協力してチーム内の子どもたちを守る」と。

3 実践の中で見えてきた成果と課題

(1)成果

成果1

成果の一つ目として、1学期末に行った学校評価アンケート結果のうち「教員の声」を紹介しておきます。

授業については、「特定の授業に特化でき、教材研究に集中できる。」「子どもたちは担任が変わることを不安に思う子もいたが、徐々に慣れ、色んな先生との関わりを楽しんでいた。」といった声がありました。

合同授業(異学年交流)では、「子供たちが少し大人になり、教師からの指導が少なくなる。」「上の学年は分かりやすく説明し、下の学年は一生懸命聞こうとすることができた。」「子ども同士、お互いの顔と名前が分かる関係ができつつあるようで嬉しい。」という声が聞かれました。

生徒指導面では「チームで対応できたことで、児童や保護者の考えを多面的に考え対応できて良かった。」「みんなで対応してくれ、1人じゃない安心感があった。」という声がありました。

成果2

2つ目の成果として、子ども同士のトラブルや不登校について挙げておきます。

令和6年度は全校児童が学校に足が向いています。教科担任制(交換授業)によりいろいろな先生と授業できることを楽しみにしている、学級担任以外の先生からも休み時間や昼休みに声をかけてもらえることで安心感を得ている、学級内の狭い人間関係だけでなくいろいろな子どもと触れ合えることで楽しさを感じるなど、要因は様々あるでしょう。

さらに、子ども同士のトラブルがあった場合は、組織体制で取り組み、節目の時には管理職等を含めたケース会議を実施することとしていますが、今年度に入ってからケース会議を実施することもほとんどなくなりました。これは前述のとおり子どもたちが学校生活を楽しめており精神的な不安定さが軽減したためトラブル自体が減ったこともあるでしょう。そのことに加えて、トラブルが小さいうちにチーム職員が気づいて早期対応を行うことが可能になったことも大きいと感じています。

成果3

3つ目の成果として、「アセス」による学級全体の子どもをプロットした表を見ても一目瞭然です。ある学級の学級内分布表を紹介します。

表中オレンジの部分は「要学習支援領域」「要対人支援領域」とある通り、何らかの個別支援が必要な子どもがこの中にプロットされることになります。資料の左が1回目、右が2回目の結果ですが、支援が必要な子供が減り、学習・生活ともに満足感が高まった子供が増えています。

(2) 課題

これまで成果と捉えられることを述べてきましたので、課題も申し上げておきたいと思います。

課題1

子どもたちから「先生によって色々ルールが違うので統率してもらいたいところがある」といった学習や生活上のルールなどそろえてほしいという意見がありました。

こういった声が出ることは予め想定していたことなので昨年度末に考えうる事項については指導部会で検討したうえで学校運営をスタートさせましたが、子どもたちからはまだまだ統率できていないと感じることがあるようです。今後も検討を重ねていく必要を感じています。

課題2

2つ目の課題として、「最後は教師の意識にかかっている」ということです。

子どもの抱える課題は複雑化しており、家庭や地域といった子どもを取り巻く環境も多様化しており、学校教育が抱える課題は今後もますます難しくなることが予想されます。

そのために、これからの学校は①1人の教師だけにその課題を背負わせないシステム(環境)づくり とともに、②個々の教師が高度な専門性に裏打ちされた自由な発想と柔軟性を持ち合わせることの両輪が必要であると考えます。

チームでやるから個人は埋没しても良いなどという話はないのです。個の教師が授業で子どもと勝負する、学校生活全般を通じて気になる子どもの心と会話する、そういった意識を強く持ち、プロとしてスキルを高め続ける気概を持ち続けてほしいと願っています。

4 おわりに~私たちの取組を一言で申し上げると・・

おわりに

私たちの取組を一言で申し上げると、人と人の「つながり」を意識することで、子どもたちの「いい顔」をつくるということに尽きます。

先生と子どもとのつながりは教務主任が中心に教科担任制を充実してくれました。子ども同士のつながりは新たな時間割に基づいてチーム内で検討して合同授業を進めてくれています。さらには先生同士のつながりはチームリーダーが中心になり情報共有会を進めてくれています。

今後もよどみなく、緊張感をもって全職員で取り組んでいきたいと思います。

子どもたちに「朝の力」を~就学時健診での校長挨拶

2024年10月23日 16時30分

足元の悪い中、就学時健康診断においでいただきありがとうございました。今日から二十四節気の「霜降(そうこう)」に入ったとのことで、朝晩は少し冷え込むようになりましたね。皆様は季節の変わり目、お体大丈夫でしょうか。そして、ここまでの子育てについても本当にお疲れ様です。私にはとうに成人を過ぎた2人の娘がおりますが、子育ては苦労の連続で、今でも心配の種は尽きないというのが実感です。ぜひ4月からは、そういった保護者の皆様の悩みも私たちは共有できたらいいなと考えています。

さて、本日の就学時健康診断は、学校保健安全法という法律で定められた、入学前にお子さんの健康状態について知る上で大切なものであります。学校医の先生方に御尽力をいただき、進めてまいります。もし“治療のすすめ”を受け取られたら、早めに病院にかかって治すようお願いします。

ここで学校のこともお話ししたいところですが、学級数も1学級か2学級かはっきりしない状況でして、入学説明会の折にはもう少しはっきり言えるかなと思います。ただしはっきりと申し上げられるのは、本校は「チーム担任制」と言いまして学級担任だけでなく、多くの教員の目で子どもたちを見ていく体制を取っておりますのでその点は安心していただければと思います。

今の時点で、保護者の皆様にお願いしたいこととして、子どもたちに「朝の力」をしっかりつけておいてほしいということです。「朝早く起きる」「朝ごはんをしっかり食べる」「朝の挨拶をしっかりする」ことの3つです。生活習慣をしっかり整えて、学校でしっかり活動できる素地を作っていただくことに加え、人とかかわる上での潤滑油にもなる「あいさつ」を自分からできる子どもになるよう、保護者の皆様に意識をもっていただけると嬉しいです。

さあ、あと5ヶ月余りでお子さんも小学生となります。お子さんにとっての何よりの薬は、お父さんやお母さんの笑顔です。もしも今後入学に当たって,成長・健康に関することや学校生活について心配なことがありましたら,何でもけっこうですのでお気軽にご相談ください。以上、就学時健康診断における私の挨拶とさせていただきます。

集団に支えられてこそ(2学期始業式の話)

2024年8月29日 10時05分

みなさん、改めましておはようございます。終業式の日には「この夏休みは2学期に向けての「準備」のための大事な時間」とお話ししましが、皆さんにとって36日間の夏休みはどんな時間になりましたか? 

さて7月26日から8月11日の間、フランスのパリでオリンピックが行われ、世界中の人々が感動と興奮に包まれました。私もこの期間中はテレビの前でずっと応援していました。

きっと選手の皆さんは、これまでの長い時間を、オリンピックで最高のパフォーマンスをするためだけに費やしてきたのでしょう。遊びたいと思ったことも、おいしいものを食べたいと思ったこともきっとたくさんあったでしょうけど、それらすべてを我慢してオリンピックにかけてきたことは、試合後の大粒の涙からも、誰にも容易に想像できることでしょう。

さらには、選手のパフォーマンスを最高のものに引き上げるためになくてはならないものとして「声援・応援」を挙げることができるでしょう。同じチームの選手やコーチとの声掛けやハグはもとより、会場の一体となった地響きのような応援が、選手の背中をグイっと押してくれたことは間違いないでしょう。

でも、こういったことはオリンピックのような特殊な世界の中だけでなく、私たちの普段の学校生活の中にもあるのです。先程の代表の子の言葉通り、みんなの中にも「2学期はこれを頑張りたい」「2学期のうちにこういうことをできるようになりたい」と心に誓っていることの一つや二つはあることでしょう。そういったことに人知れず努力するのは当然のことですが、その努力が花開くかどうかは実は学級や学年のまわりの友達の温かな応援によるところも大きいと思うのです。

集団に支えられてこそ、一人ひとりは成長するものですし、皆さん一人ひとりの成長が学級や学年といった集団をより良いものへと発展させるともいえるのです。そう考えると、「自分だけ成長できればいいや、周りはどうなってもいい」というのは勿体ない考え方なのです。自分は周りのみんなのことを精一杯応援するし、自分のことも周りのみんなに応援してもらおうと考えることが成長への近道だと言えるでしょう。
2学期は学校に来る日が78日間あります。これだけの期間頑張れば、2学期の終わりには、もう今とは別人のように大きく成長することができると思います。自分も友達も一緒に助け合い、高め合える、そんな時間を過ごしてほしいと願っています。

これで始業式での私の話を終わります。

1学期終業式のお話~心身一如

2024年7月23日 08時57分

改めましておはようございます。本当は、皆さんに直接、お話できればよかったのですが、体育館はとても暑いので、空調のきいた教室で私の話を聞いてもらうことにしました。

4月の始業式の日には、私は皆さんに、「自分からいろんなことにチャレンジしてほしいということ、さらには相手がどう思っているかを想像する「優しさ」を持ってほしいこと」の2つをお話ししました。

この1学期間を見ていると、昨年度以上に皆さんが夢中になって何かに取り組む姿を多く見られましたし、授業に集中している様子もたくさん見させてもらいました。とても成長を感じたし私も嬉しい気持ちになることが多い1学期だったと思います。

さて、鎌倉時代、曹洞宗を開いた道元というお坊さんは「心身一如(しんしんいちにょ)」と言う言葉を残しています。これは、心と身体はつながっていて、互いに影響し合っているという意味です。「身体がまっすぐならば心もまっすぐ。身体が曲がっていれば心も曲がっている。」ということです。授業中もピシッとしており、普段の生活でもほかの子に優しくできるというのは、それだけ心がまっすぐに成長していることの表れということなのです。

この後、皆さんは担任の先生から「あゆみ(通信票)」をいただきます。先生たちも皆さん一人ひとりの努力や成長を形にしようといろいろ考えてくれていましたが、中には「ぼく(わたし)は本当はもっとがんばったのになあ」とあゆみを見てちょっとがっかりする子もいるかもしれません。でもよく考えてみてください。皆さんはがんばって、確実に成長の「タネ」をまいたのです。皆さんの中には、すでにその「タネ」が地面から芽を出し、長い茎を出し、大きな花を咲かせた子もいるでしょう。その子は担任の先生から見ても「ああ、大きな花が咲いたなあ、立派に成長したなあ」と分かるからあゆみにも書きやすいでしょう。でも、まだ地面の中でしか芽が出ていない場合は外から成長は見えにくいので、あゆみにも示せていないだけかもしれません。皆さんは成長の「タネ」をまいたことに対して自分で自分のことをしっかりとほめてあげればいいのです。頑張ったことが形になるのは、人によって速さが違うのですから、他の人を羨む必要もありません。

さて、明日から36日間の夏休みに入ります。この夏休みは2学期に向けての「準備」のための大事な時間でもあります。2学期は運動会をはじめいろんな行事があり1年の中で最も成長できる時期ではあるのですが、多くの実りを得るためには、この夏休みにいろいろな経験をしておくことが大事です。私も小さい頃を振り返ると、初めて25mを泳げるようになったのも夏休みだったし、はじめて自転車に乗れたのも夏休みでした。自分のための成長のタネをまけるのも夏休みの良いところです。皆さんはこの夏休みにどんなチャレンジをしますか。2学期の始業式(8月29日)に、元気な笑顔で会えることを楽しみにしていますし、どんなチャレンジをしたかも教えてください。

懇談会前のお時間をいただいて‥(主に「チーム担任制」に関するお話)

2024年4月27日 09時50分


本日は、懇談会の前の時間を少しいただいて、本年度の学校運営(主に「チーム担任制」に関すること)についてお話させていただきます。昨年度末の入学説明会や懇談会の折にお話したことをもう少し深堀りした内容だとご理解ください。なお、学校で目指す子どもの姿などについては、この資料を用いて昨年度の入学説明会及び懇談会の折にお話させていただきましたので、時間の関係上、ここでは重複は避けることにします。



本校の現状について少しお話をさせていただきますと、今年度33名の1年生が入学し、全校で220名の児童がともに学ぶことになります。直近4年間の児童数と学級数の推移を表したものを見ると、学級数は年々減少しており、4年生と5年生は途中で2学級から1学級になっていることが分かります。
静岡県の基準では1学級当たりの児童数の上限は35人となっています。1学級となっている学年はすべて上限ぎりぎりであり、教室が狭く感じます。来年度はすべての学年で1学級になる可能性もあり、教員数は減りますが、1学級当たりの人数は増えるという状況になります。



本年度重点項目の一つとして、「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくりを整えたい」と話しました。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態を「学級担任制」と呼ぶならば、このことに加え、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる「チーム担任制」を取り入れたいと考えています。


学校だよりでも書きましたが、30名を超える子どもたちと1人の先生が「教室」という狭い空間で一日を過ごすと、水槽の中の水ではありませんが、どうしても空気(雰囲気)が澱んでくることもあります。そこで、学級の中に人の流れを作ることで、新鮮な気持ちで学習・生活ができると考えます。
先日の新聞記事の中で、静岡市教委が市内2小学校を「チーム担任制」研究校に指定したとの記事が掲載されていました。その中に「同じ子どもと接する時間が長い分信頼関係が築けるが、一度崩れた時の修復が困難で小学校こそ子どもたちを多面的に見守る必要がある」と書かれていました。私もまったく同感です。


昨年度の私の話の後、「理念は分かるが、具体的にどのように進んでいくのか見えなくて不安」とのお声もいただきました。もっともなことだと思います。そこで、田原小学校流のチーム担任制を一言で申し上げるならば、教科担任制と合同授業と学級担任チェンジのハイブリッドな取組であると言えます。


教科担任制は、現在も中学校で実施される方法ですのでイメージはしやすいでしょう。それでも1年生と6年生では他の先生が入る頻度が違うことが一目見てわかると思います。ただし、中学校や高校では教科が決まると一年間固定ですが、私たちは先ほども申しましたように、学年中途で教科担当を交換することも可能性として考えています。



合同授業については、例えば1年生と2年生が同じ時間に体育や図画工作を行い、準備運動を2年生が1年生に教えたり、一緒に話し合って作品を作ったりという取組を行っていました。さらに、6年生が5年生に対して観音山宿泊体験について必要なことをレクチャーすることなども考えられます。このように時間割を柔軟に変更することで、合同で授業することも可能になりますし、少人数での授業も可能になります。



最後の学級担任チェンジはすでに昨年度の終わりに試行で行っていますので2年生以上の方々には説明は必要ないのかもしれません。1年から3年までの低学年部と4年から6年までの高学年部の2つのチームとして、その中で担任を交代していきます。朝の会や帰りの会のみならず、給食から昼休みにかけてお話したり遊んだりすることで、担任以外の先生とも仲良くなれるチャンスととらえてくれると嬉しいです。


ハイブリッドな取組と申しましたが、どの取組をいつ行うのかは、機械的に「1週間ごとに担任を交代する」などと決めるのでなく、チームリーダーを中心に、チーム職員が子どもたちの様子を見ながら決めていきます。
学校の枠に子どもを合わせるのでなく、子どもの実情に合わせてできるだけ学校の環境を柔軟に変化させる「流体」組織を目指すという私たちの思いを具現化するものです。



こういった取組の目指す先にあるのは、学習や生活がより魅力的なものになり、子どもたちの「いい顔」であふれる姿です。
学習面で言えば、教員も得意な教科とそうでない教科はあります。得意教科を中心に子どもたちに授業を展開することで、子どもたちもよりワクワクとした気持ちで「分かりたい」「できるようになりたい」という気持ちを満足することができると考えます。
生活面では、これまで以上に多くの先生とかかわり、子ども自身も気づかなかった良さや可能性に気づくことが期待できます。さらに、学級担任が近くにいることで、子どもたちもついつい学級づくり(より良い集団作り)さえも学級担任に任せてしまう傾向があります。しかし、いろいろな先生が学級の中に入ってくることで、子どもたちにも「見られている」という感覚を持ってもらい、自分たち自身でより良い関係を築こうという意識を持ってほしいと考えます。


どれだけ崇高な理想を掲げようとも、そのことで子どもたちや保護者の皆様の不安感が増すのは論外です。学校だよりでお知らせしたとおり、職員間の情報共有、子どもたちだけでまとまりのある集団を作れること、保護者が相談しやすいようにすることなど検討を重ねています。
2学期の希望面談の際には窓口担任以外のチーム職員ともお話をしていただけるように用意を進めています。多くの目で見ると子どもをより多面的にとらえることができることが実感していただけることを期待しています。
さらに3学期には地域公開日を土曜日に設定してみました。保護者のみならず、これまで様々な機会に子どもにかかわっていただいた地域の方々にも、子どもたちの姿をもってチーム担任制の成果をお見せしたいと考えています。


あと一言だけ、お付き合いください。
チーム担任制を職員とともに模索し始めた昨年7月から、私はたびたび20年前の私と会話し続けています。20年前の私は学級担任として熱意と自信をもって子どもたちと向き合っていました。
20年前の私は、きっと「学級担任として子どもたちとかかわりたいから小学校教員になった。でも、チーム担任なんてなったらやりがいを感じないのではないか。」と言うでしょう。
さらに「自分の学級を他のどの学級より良くすることが自分の役割。だから他の先生は皆ライバルだし、職員室でも必要最低限のことだけ喋ればいい。職員室でお互いに切磋琢磨しあえば、いい学校になるんじゃないの?」」とも言うかもしれません。
20年前の私を全否定するつもりはありませんが、今の私から見ると結局、先生のイメージの中に子どもを閉じ込めていただけじゃないのか?子どもたちに自由に考えさせ、先生の発想を上回るような子どもたちの思いを引き出すことができていなかったのではないか?そもそも20年前の私の考えは自己満足に過ぎず、学校全体の雰囲気をよくすることに寄与していなかったのではないか?などと思うことがあります。



本校のチーム担任制は途に就いたばかりですが、職員室の雰囲気は活気があるし、子どもたちの表情も大変明るい、いい風が吹いているように感じます。温かく見守っていただけると嬉しいですし、家庭での会話の中で「もっとこうした方が‥」とのアイディアがあれば何でも教えてください。以上、私のお話にお付き合いいただきありがとうございました。

新任式・始業式・学級担任紹介での校長の話

2024年4月5日 12時07分

まず、「新任式」では次のようなお話をしました。
春の日差しが心地よい毎日となってきましたね。3月末には5名の先生方とお別れをしました。皆さんの中にも、寂しい思いとともに、「次はどんな先生が来てくださるのかなあ」と今日の日を心待ちにしてくれていた子も多いのではないでしょうか。さて、本日はここに5名の先生方を新たに本校にお迎えする運びとなりました。どの先生方も、早く皆さんと会いたい、一緒に勉強や運動をしたいとやる気いっぱいです。
新しい先生方に会ったら、ぜひ皆さんの方から声をかけて田原小の良さを教えてあげてください。では、ここでお一人ずつお名前とどの学校から来たかを紹介します。


つづいて、「始業式」では次のお話をしました。
改めましてこんにちは。
午前中の入学式で新1年生33名が入学し、全校で220名の子どもたちが、本校でともに学ぶことになります。皆さんにおいても、多少の不安はありながらも、大いなる希望と期待をもって新年度を迎えたのではないでしょうか。

午前中の入学式の中で私は、「いろいろなことに興味をもって「いろんなことをやってみたいな」と思っている子にとっては、学校は「ワクワク」の宝箱のようなところになる」と話をしました。皆さんには、自分自身で見つけた「できるようになりたいこと」(ゆめ)を、友達や先生と協力し諦めず(本気)に挑戦するような人になってほしいなと願っています。

昨年度の中でも、例えば、昼休みになるたびにジャンピングボードに乗って「この技ができるようになりたい」と強く願いひたすら練習を繰り返す子が何人もいました。さらには授業を見に行くと、算数等のプリントを前に頭を抱えながら分からないところを一生懸命考え、諦めずにやり遂げようとする子もたくさん見ました。こういう姿がもっともっと増えてほしいなと思っています。

学校は失敗するところですし失敗から多くのことを学ぶところですので、どんどん自分からいろんなことにチャレンジしてほしいと考えています。さらには、友達と協力し一緒に楽しい気持ちを持つために、相手がどう思っているかを想像する「優しさ」を持ってほしいと思っています。

私たちも、本年度はこれまで以上に、1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進めることや、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる機会を増やしていきたいと考えています。昨年度の担任交代後のアンケートでもほとんどの子が「別の先生と話せてうれしかった」「来年度もこういう取組をやってほしい」などの意見を書いてくれていましたので、きっと昨年度以上に楽しく学校生活が過ごせるのではないかと思っていますし、より多くの先生に見守ってもらえているという安心感も得られるのでは思っています。みんなにそうやって思ってもらえるように私たちも努力していきたいと考えています。

以上で、1学期始業式での私のお話を終わります。


最後に学級担任を発表しました。
さあ、皆さんにとってお待ちかねの時間になりました。
4 月は新たな出会いの季節です。新しい友達、新しい先生との出会いを通して、今まで気づかなかった自分のよいところもたくさん発見することができると思います。では、いよいよ担任の先生を発表していきますよ。
〇 まず低学年部です。(1~3年及びほほえみ1組の職員)
先程、「学級担任の先生」と紹介しましたが、この1年を通して、低学年部の先生は、朝の会や帰りの会だけでなく、いろいろな教科でかかわりが深くなります。ここにいる先生みんなが私たちの担任の先生だと思ってもらっていいですね。
〇 次に高学年部です。(4~6年及びほほえみ2組の職員)
高学年部も同じで、この1年を通してかかわりが深くなります先生たちですので、みんなが私たちの担任の先生だと思っておいてください。
〇 最後に学年部には所属しませんが、学校全体を見てくださる先生たちを紹介します。
外国籍の子どもたちへの指導の先生、保健室の先生、教頭先生と教務主任の先生。最後に皆さんの学習のサポートをしてくださいます支援員の先生です。

繰り返しになりますが、多くの出逢いを通して、新しい自分にも出会い、自分のよいところをさらに伸ばせる最高の一年になることを願っています。

学校は「ワクワク」の宝箱(入学式式辞)

2024年4月5日 12時01分

本日入学した33名の新入生の皆さん、おめでとうございます。皆さんは今日から伝統ある田原小学校の仲間になりました。私たちは、皆さんの入学を心待ちにしていました。どの子もずいぶんお行儀がよいですね。しっかりとお返事ができましたし、座り方も上手で、私は先程からさすがだなと思って皆さんのことを見ていました。

皆さんは、この田原小学校に入学することを楽しみにしてくれていましたか?いろいろなことに興味をもって「いろんなことをやってみたいな」と思っている子にとっては、学校は「ワクワク」の宝箱のようなところになるでしょう。

例えばはじめはこわそうだなと思っていたお友達や先生も、勇気を出してお話をしてみると、案外優しいということに気づくこともあるでしょうし、そうなるとお話することが楽しくなるでしょう。さらに、最初は難しそうだな、自分にはできそうもないなと思っていることも、いざやってみると案外自分にもできそうだなと気づいたり、できるようになって楽しいなと感じたりすることもあるでしょう。

私はもうすぐ60歳になりますが、こんな私にも知らないことや経験したことがないことはまだまだいっぱいあります。だから新しい何かに出会うとワクワクするし、うれしい気持ちになります。皆さんにも、学校生活を通じてそんな気持ちをたくさん味わってほしいと思っています。

ここで、岸 武雄さんが書いた「わたしはひろがる」という詩の一節を紹介します。
わたしは小さいとき、
おやつのお菓子が弟より大きくないとおこった。
じだんだふんで泣いたこともある。
わたしが世界のすべてであった。
わたしが世界のすべてであった。
やがてわたしは、弟もわたしと同じように、
大きいお菓子をほしがっていることが、わかってきた。
わたしはけんかしながらも、
同じように分けることをおぼえた。
ときには、弟があまりうまそうに食べるので、
自分のぶんも分けてやった。
弟といっしょにお菓子を食べると、
お菓子の分量はへったが、なんとなく楽しい。
こうして、わたしの中へ弟がはいってきた。
こうして、わたしの中へ弟がはいってきた。 

この「わたし」は最初自分のことしかわからなかったのに、弟のことが分かると少しずつ楽しくなってきたと言っていますね。「学ぶ」と言うのはこうやって「かわる」ということだし、「楽しい」ということだと思いますね。

ここで、お父さんやお母さんに、お話をしますので、少しの間、待っていてくださいね。
保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。私たち教職員一同は子どもたち一人一人をかけがえのない存在として大切に育てていくことをお約束します。私たちは先程、子どもたちに話したとおり、自身で見つけた目の前の課題(ゆめ)を、友達や先生と協力し諦めず(本気)に挑戦するような子どもに育てていきたいと考えています。そのため、まずは子どもたち一人ひとりの思いを聴き、子どもを知ることがすべてのスタートだと考えます。ぜひ、学校と家庭・地域の方々が手を取り合って、子どもを真ん中に、子どもの姿を語り合える関係を築いていきたいと思います。

結びになりますが、本日は、多くの来賓の皆様にご出席いただき、このように入学式を挙行できますことはこの上ない喜びであります。私たち教職員一同は、田原っ子すべての子どもの「いい顔」を作り出せるよう全力で取り組むことを本日ご出席いただいたすべての方々に重ねてお約束いたしますとともに、ぜひそれぞれのお立場から本校教育にお力添えをいただけますようお願い申し上げ、式辞といたします。

「やりたいことを見つけたその先に」卒業式式辞

2024年3月19日 11時27分

田原小学校令和5年度卒業生として本校を巣立つ51名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。また本日は多くの来賓の皆様並びに保護者の皆様にご臨席を賜りました。卒業生、教職員を代表して、心からお礼申し上げます。


さて、只今皆さんにお渡ししました卒業証書は、六年間いろいろな困難を乗り越え、頑張ってきた証です。皆さんは登下校や縦割り活動等の際に、下級生に対して常に優しい眼差しを向けてくれていましたし、何より皆さんの屈託のない笑顔で、私たちの心を暖かくしてくれました。皆さんがいてくれたから、田原小学校は穏やかで温かな学校でいられたのだとさえ思っています。本当にありがとう。そして、卒業文集にも寄稿した通り、これから大人になっても、今と変わらない君たちのまま、キラキラした目で夢を語ってくれる青年に成長することを楽しみにしています。


幸福になるための最大のカギは何かということについて、既に様々な調査から明らかになっているようです。それはお金でも学歴でも容姿や外見でもなく「自己決定」なのだそうです。つまり、物事を自分自身の意思で決定し、それを実行できていることこそが最も幸せになる近道なのだそうです。やりたいことを心に持ち、生き生きと毎日を過ごしてほしいと願っています。


しかしながら、人生というものは光もあれば、陰もあるものです。もしかすると、望むことや願うことの達成は簡単なことではないのかもしれません。時として努力が報われないこともあるでしょう。ついつい他人と比較して自分が小さく見えてしまい、そんな自分のことを格好悪いなあと自分自身をおとしめてしまうことだってあるかもしれません。


何かを成し遂げる前に簡単に諦めてしまい、「でも、だって、どうせ…」と言い訳ばかりする人は、正直、私も格好悪いなあと思います。苦しいときにはひと休みしてもいいし、周りに「助けて!」と言っていい、そうしながらも最後まで負けずに立ち続ける人が真に格好いい人だと私は思うのです。苦しい時間を諦めずに過ごすうちに、人生の荒波の中でもがいてさえいれば、ちゃんとその姿を見てくれている人も出てきます。人生はそうやってうまくいくものです。そう考えると、人生なんて、誰かに勝とうなどと思わなくて良いのではないか、自分自身に負けなければそれでいいのではないかとさえ思います。生きてさえいれば、道は開けるものです。


さらに言えば、人間というものは経験から多くを学ぶ生き物ですので、苦しい時間を過ごした人ほど、他人の苦しさも理解でき「優しさ」という最大の武器を手にすることもできると、私は思います。「手当」という言葉があります。その言葉の由来は、手のひらを患部に当てることで体の不調を治すことからきているそうです。私は皆さんに期待します。やりたいことを見つけ、一生懸命生きたその先に、例えば、隣に寂しそうな顔をした人や不安そうな顔をした人がいれば、そっと背中に手を当てて気持ちを落ち着けてあげられる、そんな優しく温かな人になってくれることを。


最後になりましたが、保護者の皆様におかれましては、高い所からではございますが、心よりお子様のご卒業をお祝い申し上げると共に、これまでの田原小学校に対する温かくそして熱いご支援・ご協力に感謝し、心から厚く御礼申し上げます。結びになりますが、卒業生全員の前途に幸多かれとお祈りし、式辞といたします。

自分で自分のことをほめる日(修了式)

2024年3月18日 09時46分

今日は、とうとう1年間の終わりの日になりました。私は昨年の4月に本校に赴任して以降、この一年は大変早く時間が過ぎた感があります。当初は新しい土地での生活をスタートさせるということで大変緊張しましたが、皆さんの頑張る姿や屈託のない笑顔にふれることで、とても楽しく温かな気持ちにさせてもらいました。


 さて、今、各学年代表の人に「修了証書」を渡しました。これは、みなさんがそれぞれの学年で学習すべきことを見事に修了できたという証です。ですからみなさんは、4月から1つ学年が上がることになります。皆さんのお父さんやお母さん、そして先生方は今日の日を何より喜んでいると思います。ぜひ、お礼を言えるといいですね。


3学期の始業式の折には、「有終の美」という言葉を意識して、終わり(最後)までやり遂げるべくしっかりと走り切ってほしいとお話をしましたが、本当に前向きに頑張ってくれましたし、皆さんはこの一年で確実に成長したと、私は感じています。去年の今頃はできなかったことが、この一年間の頑張りでたくさんできるようになったことでしょう。ぜひ、この後教室で、修了証書を担任の先生からもらってください。そして、この一年をみんなで振り返ってみてください。今日は、自分で自分のことをほめる日、自分たちの学級を自分たちで創り上げたことに対してお互いをたたえ合う日にしてください。


さて、明日から春休みです。新しい学年に向けてじっくり考える時間だと思います。4月から、自分の得意なことや好きなことなど、さらに伸ばせるよう、今から準備を進めてくださいね。以上で、私のお話を終わります。

来年度の重点取組など(入学説明会・懇談会)

2024年3月1日 09時32分

元日には能登半島を中心にマグニチュード7.6、最大震度7という大規模地震が起き、被災された方も多くいるとの報道がなされました。本校児童の中にも、帰省や旅行で訪れていたり、親戚など身内の方が被災され大変な思いをされたりしている方もいらっしゃると伺いました。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復旧を祈るばかりです。

さて、私たちは在校生とその保護者、そして教職員からアンケート調査によりたくさんの意見をいただき、それらを参考に来年度の教育課程の在り方を全職員で分担して検討を進めているところであります。皆様に集まっていただいているこの機会に、ほんの少しお時間をいただいて、変更すべきことやあらたに取り組みたいことを中心にお話させていただきたいと考えています。


まず、学習面についてお話しします。多くの子どもたちは、授業を楽しみ、自分の考えを発言しようとするなど、意欲的に学習に取り組もうとしています。一方で、「友達の意見・考えに反応を返すことができた」については概ねできていると肯定的な評価をしていますが、私たちは当初A評価をした児童70%以上と設定しましたので、実際は目標値には届いていないこととなり、教師側から見る「子ども同士の学び合いの姿」はまだまだ高みを目指していきたいという思いがあります。教師の中からも、すぐに「~してもいいですか」「どうすればいいですか」という子供が多いことから、自ら「考える」という習慣を身につけさせたいとの意見も挙がっています。

保護者の学習面での評価は子どものそれより全体的に低くなっています。特に「自分で考えたやり方で取り組むことができる」は66%、「進んで家庭学習に取り組むことができている」は77%であるなど、子ども自身が学習内容や学習方法を考えて進んで学習に取り組む姿に課題があると感じているようです。さらに、お子さんの様子を見て、「確実に理解できていないことが多々見受けられる」と不安を抱く方もいて、「友達や先生と意見を伝えあう学習スタイル」「理解度別の学習や少人数の行動の機会」を増やしてほしいとの思いも複数の保護者が抱いていることが分かりました。

これらのことを考え合わせると、様々な学習形態の中で、友達同士で話し合いながら自ら課題を解決していくような学習を進めていく必要があると考えます。さらには、家庭学習の在り方も見直し、より授業と連動したものにしていく必要があると考えています。



つづいて、生活面についてお話しします。多くの子どもは学校が楽しいと感じ、困ったことや分からないことを聞ける友達がいると感じているようです。さらに、概ね友達同士仲良く生活することができたとも感じているようですが、これについても私たちは当初A評価をした児童80%以上と設定しましたので、実際は目標値に届いていないこととなり、子ども同士のかかわりについてもさらなる高みを目指していきたいと考えるところです。

保護者の皆様からは、子ども同士のトラブルを不安視する声もあり、「トラブルがあった際の解決策についての具体的な指標を示して」との要望もいただきました。さらには、学級内の活動にとどまらず、年齢の壁なく、他学年、縦割りでの活動を増やし、多くの子どもと触れ合える機会を増やしてほしいとの意見も複数みられます。

これらのことを考え合わせると、私たちは学年団や縦割り活動など異学年で交流する機会を増やすとともに、子どもたち同士で日常の些細なトラブルを解決できるようなスキルを身に付けさせる必要があると考えています。

ここまで学校評価アンケート結果から考えられることを述べてきましたが、一言で言えば、子どもたちは概ね学校生活に満足しているようだし、保護者の皆様も教職員もそのことはわかるのだが、今後については何となく心配なので早めに対応を打っていきたいというところではないかと思っています。


では、ここからが、アンケート結果を踏まえて、来年度以降、どのようなことを重点的に取り組んでいくのかということですが、その前に、田原小が目指そうとしている子どもの姿や教育方針について知っている」に対して肯定的な考えを示す保護者が84%と他の項目に比べてやや低かったこともあり、学校が目指す姿を明確に示しておきたいと思います。

私たち田原小職員の使命は、学校経営目標に示している通り、子どもたちを「いい顔」にすることであり、何が「いい顔」かと問われれば、学校教育目標の「ゆめに向かい 本気で取り組んでいる」ときの顔だと考えています。「ゆめ」とは「日々の授業や単元を通してできるようになりたいこと」「なりたい自分(上級生や教師、両親等をロールモデルとしてあんなふうになりたい、あんなふるまいがしたいと思える)に向かって、日々目指していくものやこと」という自分自身に関するものに加え、「こんな学級にしたい」「こんな行事にしたい」という自身が所属する学級や学校に関するものととらています。さらに、「本気」とは、「熱中する」「一生懸命」に留まらず、うまくいかない、思ったようにできないときに簡単にあきらめない姿を目指しています。

さて、いよいよ来年度の重点事項に話を移していきます。まず1つ目は、「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくりを整える」ということです。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態にとらわれず、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる機会を作りたいと考えています。
具体的には、学年団(低・中・高)をチームとして、各教科の授業を担任以外の先生が行うことや、道徳等で学級担任同士入れ替わって授業を行うこと(いわゆる交換授業)、生活科や総合的な学習の時間、体育、音楽など合同でTT授業を行うこと(いわゆる合同授業)などが考えられます。また、朝の会や帰りの会、給食で違う学級に行ってみるという取り組みも考えられます。こうすることで、学級の子どもしか知らないという状態から、チーム内の子どものことを理解できるようになります。言い換えると、学級担任のほかに副担任がいるという状態が生まれると言えます。複数教員で1人の子どもを見ることで、その子どもを深く理解できるようになります。さらに中学校のような教科担任制も今年度以上に取り入れることになるので、個々の教員の得意分野(専門性)もより生かせるようになります。

子どもの側からしても、これまで以上にいろいろな子どもと活動する機会が増えることで、コミュニケーションスキルの高まりも期待できます。さらには、学級担任の先生には相談しづらいことも副担任には相談できると言ったように、より多くの先生に見守ってもらえているという安心感を得られると考えます。

重点事項の2つ目は、「子どもたち自身で生活上のもめ事(トラブル)を解決する意識とスキルを育成する」ということです。一般的に、教師が子どものすべてを見ることができるわけではありませんし、トラブルは大抵教師の見えないところで起こるものです。現在も、全職員で子どもたちのことを丁寧に見ていますが、それでも教師が常にすべての子どもの行動を見張ることは現実的ではありません。したがって、温かくいじめやトラブルが起こりにくい集団形成を進めていくことこそ、今後の課題であると考えます。

そこで、子ども同士で日常に起こる些細なトラブルを自分たちで解決できるようにする手法として、ピアサポートという考え方を取り入れたいと考えています。ピア(仲間)・サポート(支援)で「仲間による支援」を意味します。最終的には子どもたち同士で問題解決したり対立解消(もめ事の仲裁)したりするためのスキルを身に付けるもので、年間を通じて外部講師に入っていただき、子どもたちへの指導を行っていきます。

ただし、そういったことを取り入れれば、子ども同士のトラブルがゼロになるなどとは考えていません。そのため、何かトラブルが起こった際も、生徒指導の根幹は、悪いことをした子供に罰を与えたり、誰が良くて誰が悪いかを選別したりするのでなく、子どもの思いを①今、どういう思いでいるのか②この先、どうなりたいのか③そのためにどうしたいのか といった3ステップで聴き、思いを受け止めたうえで適切な行動様式を指導することを全職員で共通理解して、子どもの指導にあたっていきます。


3つ目の重点事項は、「年間を通じた「子どもが育つ環境」を整える」ということです。保護者の意見の中で、「10月はスケジュールがきつい」「運動系の行事が目立つ」「年齢の壁なく、他学年、縦割りでの活動を増やし、自然に触れる活動を」など、学校行事の見直しにかかるものが多くありましたし、これらについては、学校側としても同じ思いを抱いているところです。
一時期に学校行事が集中することは望ましいことでなく、年間を通じて子どもが育つ環境をバランスよく整えていくことが大切です。そのため、10月下旬から11月上旬に運動会を、12月から1月にかけて持久走や短縄集会を持ってくることはこれまで通りとし、5月生の観音山宿泊体験学習を5月、6年生の修学旅行を6月に持ってきます。このことにより、自分たちで行事を企画運営する機会を早めに計画することで、学年の集団としてのまとまりを早い時期から高めたいと考えています。さらに、保護者からの意見にもあったように、体育的行事以外のものも充実することで、運動は苦手でもほかのことでなら活躍できる子の活躍の場は広がります。学年団での行事や集会についても年間を通じて配置できるといいなと思っています。具体については現在検討中です。4月には詳細をお伝えします。

保護者から「自然に触れる活動を」との要望もありました。子どもたちが「田原地区の歴史や自然について関心がある」と答えた割合は86%、教職員が「子どもたちは地域の人たちと学校や地域でかかわっている」と答えた割合も80%とやや低めです。地域を知り地域の「ひと・もの・こと」とかかわる経験を増やすことの必要性を感じます。これについても、コミュニティ・スクール・コーディネーターと相談しながら進めていきたいと考えています。


おわりに、「田原っ子がどのような子になってほしいか」「どんな力を伸ばしていきたいか」との問いに対する保護者の皆様の願いについて触れてみたいと思います。今回、最も多かったものとして、「自分で考えて実行する、自己肯定感を高める」「相手を思いやる、尊重する」姿でした。これについても、私たちもまったく同じように考えています。先程も申しましたが、1日の多くの時間を同じ集団の中で教師の指示どおりに学習を進める形態から、一歩踏み出し、学年団で学習を進めることや教科ごとにいろんな先生と授業をおこなうようなダイナミックな柔軟性に富んだ環境を整えることで、より子どもたちはワクワクして学習や生活に向かえると考えています。さらに、『複数教員で子どもを見ることで、子どもをいろいろな角度から理解する』と申しましたが、これは医療現場において医師や看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師など、患者に関わるスタッフがそれぞれの視点で検討を行い、専門家としてどのような職種であっても対等な立場の意見を出すという「チームカンファレンス」と同様の考え方であると私たちは思っています。加えて、私たちは、学校現場におけるカンファレンスの場に保護者も巻き込みたいと考えています。私たちは、家庭での子どもの姿は絶対に見ることができないし、子ども理解のために家庭での表れや保護者の「こうなってほしい」という思いを知ることは絶対条件であると考えています。

これも先ほど申しましたが、年間を通じた「ピアサポート」トレーニングの実施や、子どもの思いをしっかり「聴く」ことから望ましい行動を教師と子どもで一緒に考えることで、これまで以上により良い人間関係を築けるようになると考えています。

今回、私からお話させていただく内容は以上となりますが、詳細については学校だよりの中で説明をさせていただきますので、こちらをご覧いただければと思います。長い時間になりましたが、聴いていただきありがとうございました。