来年度の重点取組など(入学説明会・懇談会)
2024年3月1日 09時32分元日には能登半島を中心にマグニチュード7.6、最大震度7という大規模地震が起き、被災された方も多くいるとの報道がなされました。本校児童の中にも、帰省や旅行で訪れていたり、親戚など身内の方が被災され大変な思いをされたりしている方もいらっしゃると伺いました。被害に遭われた皆様には心よりお見舞い申し上げるとともに、1日も早い復旧を祈るばかりです。
さて、私たちは在校生とその保護者、そして教職員からアンケート調査によりたくさんの意見をいただき、それらを参考に来年度の教育課程の在り方を全職員で分担して検討を進めているところであります。皆様に集まっていただいているこの機会に、ほんの少しお時間をいただいて、変更すべきことやあらたに取り組みたいことを中心にお話させていただきたいと考えています。
まず、学習面についてお話しします。多くの子どもたちは、授業を楽しみ、自分の考えを発言しようとするなど、意欲的に学習に取り組もうとしています。一方で、「友達の意見・考えに反応を返すことができた」については概ねできていると肯定的な評価をしていますが、私たちは当初A評価をした児童70%以上と設定しましたので、実際は目標値には届いていないこととなり、教師側から見る「子ども同士の学び合いの姿」はまだまだ高みを目指していきたいという思いがあります。教師の中からも、すぐに「~してもいいですか」「どうすればいいですか」という子供が多いことから、自ら「考える」という習慣を身につけさせたいとの意見も挙がっています。
保護者の学習面での評価は子どものそれより全体的に低くなっています。特に「自分で考えたやり方で取り組むことができる」は66%、「進んで家庭学習に取り組むことができている」は77%であるなど、子ども自身が学習内容や学習方法を考えて進んで学習に取り組む姿に課題があると感じているようです。さらに、お子さんの様子を見て、「確実に理解できていないことが多々見受けられる」と不安を抱く方もいて、「友達や先生と意見を伝えあう学習スタイル」「理解度別の学習や少人数の行動の機会」を増やしてほしいとの思いも複数の保護者が抱いていることが分かりました。
これらのことを考え合わせると、様々な学習形態の中で、友達同士で話し合いながら自ら課題を解決していくような学習を進めていく必要があると考えます。さらには、家庭学習の在り方も見直し、より授業と連動したものにしていく必要があると考えています。
つづいて、生活面についてお話しします。多くの子どもは学校が楽しいと感じ、困ったことや分からないことを聞ける友達がいると感じているようです。さらに、概ね友達同士仲良く生活することができたとも感じているようですが、これについても私たちは当初A評価をした児童80%以上と設定しましたので、実際は目標値に届いていないこととなり、子ども同士のかかわりについてもさらなる高みを目指していきたいと考えるところです。
保護者の皆様からは、子ども同士のトラブルを不安視する声もあり、「トラブルがあった際の解決策についての具体的な指標を示して」との要望もいただきました。さらには、学級内の活動にとどまらず、年齢の壁なく、他学年、縦割りでの活動を増やし、多くの子どもと触れ合える機会を増やしてほしいとの意見も複数みられます。
これらのことを考え合わせると、私たちは学年団や縦割り活動など異学年で交流する機会を増やすとともに、子どもたち同士で日常の些細なトラブルを解決できるようなスキルを身に付けさせる必要があると考えています。
ここまで学校評価アンケート結果から考えられることを述べてきましたが、一言で言えば、子どもたちは概ね学校生活に満足しているようだし、保護者の皆様も教職員もそのことはわかるのだが、今後については何となく心配なので早めに対応を打っていきたいというところではないかと思っています。
では、ここからが、アンケート結果を踏まえて、来年度以降、どのようなことを重点的に取り組んでいくのかということですが、その前に、田原小が目指そうとしている子どもの姿や教育方針について知っている」に対して肯定的な考えを示す保護者が84%と他の項目に比べてやや低かったこともあり、学校が目指す姿を明確に示しておきたいと思います。
私たち田原小職員の使命は、学校経営目標に示している通り、子どもたちを「いい顔」にすることであり、何が「いい顔」かと問われれば、学校教育目標の「ゆめに向かい 本気で取り組んでいる」ときの顔だと考えています。「ゆめ」とは「日々の授業や単元を通してできるようになりたいこと」「なりたい自分(上級生や教師、両親等をロールモデルとしてあんなふうになりたい、あんなふるまいがしたいと思える)に向かって、日々目指していくものやこと」という自分自身に関するものに加え、「こんな学級にしたい」「こんな行事にしたい」という自身が所属する学級や学校に関するものととらています。さらに、「本気」とは、「熱中する」「一生懸命」に留まらず、うまくいかない、思ったようにできないときに簡単にあきらめない姿を目指しています。
さて、いよいよ来年度の重点事項に話を移していきます。まず1つ目は、「複数教員で子ども理解を進める仕組みづくりを整える」ということです。1人の先生がほとんどの時間を同じ学級の子どもたちとともに生活し学習を進めるという形態にとらわれず、子どもたちが1日の学校生活の中で、より多くの先生と学習を進める、違う学級や学年の子供とともに学習や生活を進められる機会を作りたいと考えています。
具体的には、学年団(低・中・高)をチームとして、各教科の授業を担任以外の先生が行うことや、道徳等で学級担任同士入れ替わって授業を行うこと(いわゆる交換授業)、生活科や総合的な学習の時間、体育、音楽など合同でTT授業を行うこと(いわゆる合同授業)などが考えられます。また、朝の会や帰りの会、給食で違う学級に行ってみるという取り組みも考えられます。こうすることで、学級の子どもしか知らないという状態から、チーム内の子どものことを理解できるようになります。言い換えると、学級担任のほかに副担任がいるという状態が生まれると言えます。複数教員で1人の子どもを見ることで、その子どもを深く理解できるようになります。さらに中学校のような教科担任制も今年度以上に取り入れることになるので、個々の教員の得意分野(専門性)もより生かせるようになります。
子どもの側からしても、これまで以上にいろいろな子どもと活動する機会が増えることで、コミュニケーションスキルの高まりも期待できます。さらには、学級担任の先生には相談しづらいことも副担任には相談できると言ったように、より多くの先生に見守ってもらえているという安心感を得られると考えます。
子どもの側からしても、これまで以上にいろいろな子どもと活動する機会が増えることで、コミュニケーションスキルの高まりも期待できます。さらには、学級担任の先生には相談しづらいことも副担任には相談できると言ったように、より多くの先生に見守ってもらえているという安心感を得られると考えます。
重点事項の2つ目は、「子どもたち自身で生活上のもめ事(トラブル)を解決する意識とスキルを育成する」ということです。一般的に、教師が子どものすべてを見ることができるわけではありませんし、トラブルは大抵教師の見えないところで起こるものです。現在も、全職員で子どもたちのことを丁寧に見ていますが、それでも教師が常にすべての子どもの行動を見張ることは現実的ではありません。したがって、温かくいじめやトラブルが起こりにくい集団形成を進めていくことこそ、今後の課題であると考えます。
そこで、子ども同士で日常に起こる些細なトラブルを自分たちで解決できるようにする手法として、ピアサポートという考え方を取り入れたいと考えています。ピア(仲間)・サポート(支援)で「仲間による支援」を意味します。最終的には子どもたち同士で問題解決したり対立解消(もめ事の仲裁)したりするためのスキルを身に付けるもので、年間を通じて外部講師に入っていただき、子どもたちへの指導を行っていきます。
ただし、そういったことを取り入れれば、子ども同士のトラブルがゼロになるなどとは考えていません。そのため、何かトラブルが起こった際も、生徒指導の根幹は、悪いことをした子供に罰を与えたり、誰が良くて誰が悪いかを選別したりするのでなく、子どもの思いを①今、どういう思いでいるのか②この先、どうなりたいのか③そのためにどうしたいのか といった3ステップで聴き、思いを受け止めたうえで適切な行動様式を指導することを全職員で共通理解して、子どもの指導にあたっていきます。
ただし、そういったことを取り入れれば、子ども同士のトラブルがゼロになるなどとは考えていません。そのため、何かトラブルが起こった際も、生徒指導の根幹は、悪いことをした子供に罰を与えたり、誰が良くて誰が悪いかを選別したりするのでなく、子どもの思いを①今、どういう思いでいるのか②この先、どうなりたいのか③そのためにどうしたいのか といった3ステップで聴き、思いを受け止めたうえで適切な行動様式を指導することを全職員で共通理解して、子どもの指導にあたっていきます。
3つ目の重点事項は、「年間を通じた「子どもが育つ環境」を整える」ということです。保護者の意見の中で、「10月はスケジュールがきつい」「運動系の行事が目立つ」「年齢の壁なく、他学年、縦割りでの活動を増やし、自然に触れる活動を」など、学校行事の見直しにかかるものが多くありましたし、これらについては、学校側としても同じ思いを抱いているところです。
一時期に学校行事が集中することは望ましいことでなく、年間を通じて子どもが育つ環境をバランスよく整えていくことが大切です。そのため、10月下旬から11月上旬に運動会を、12月から1月にかけて持久走や短縄集会を持ってくることはこれまで通りとし、5月生の観音山宿泊体験学習を5月、6年生の修学旅行を6月に持ってきます。このことにより、自分たちで行事を企画運営する機会を早めに計画することで、学年の集団としてのまとまりを早い時期から高めたいと考えています。さらに、保護者からの意見にもあったように、体育的行事以外のものも充実することで、運動は苦手でもほかのことでなら活躍できる子の活躍の場は広がります。学年団での行事や集会についても年間を通じて配置できるといいなと思っています。具体については現在検討中です。4月には詳細をお伝えします。
保護者から「自然に触れる活動を」との要望もありました。子どもたちが「田原地区の歴史や自然について関心がある」と答えた割合は86%、教職員が「子どもたちは地域の人たちと学校や地域でかかわっている」と答えた割合も80%とやや低めです。地域を知り地域の「ひと・もの・こと」とかかわる経験を増やすことの必要性を感じます。これについても、コミュニティ・スクール・コーディネーターと相談しながら進めていきたいと考えています。
おわりに、「田原っ子がどのような子になってほしいか」「どんな力を伸ばしていきたいか」との問いに対する保護者の皆様の願いについて触れてみたいと思います。今回、最も多かったものとして、「自分で考えて実行する、自己肯定感を高める」「相手を思いやる、尊重する」姿でした。これについても、私たちもまったく同じように考えています。先程も申しましたが、1日の多くの時間を同じ集団の中で教師の指示どおりに学習を進める形態から、一歩踏み出し、学年団で学習を進めることや教科ごとにいろんな先生と授業をおこなうようなダイナミックな柔軟性に富んだ環境を整えることで、より子どもたちはワクワクして学習や生活に向かえると考えています。さらに、『複数教員で子どもを見ることで、子どもをいろいろな角度から理解する』と申しましたが、これは医療現場において医師や看護師、管理栄養士、理学療法士、薬剤師など、患者に関わるスタッフがそれぞれの視点で検討を行い、専門家としてどのような職種であっても対等な立場の意見を出すという「チームカンファレンス」と同様の考え方であると私たちは思っています。加えて、私たちは、学校現場におけるカンファレンスの場に保護者も巻き込みたいと考えています。私たちは、家庭での子どもの姿は絶対に見ることができないし、子ども理解のために家庭での表れや保護者の「こうなってほしい」という思いを知ることは絶対条件であると考えています。
これも先ほど申しましたが、年間を通じた「ピアサポート」トレーニングの実施や、子どもの思いをしっかり「聴く」ことから望ましい行動を教師と子どもで一緒に考えることで、これまで以上により良い人間関係を築けるようになると考えています。
今回、私からお話させていただく内容は以上となりますが、詳細については学校だよりの中で説明をさせていただきますので、こちらをご覧いただければと思います。長い時間になりましたが、聴いていただきありがとうございました。