自分との対話~卒業式での校長式辞

2025年3月19日 15時34分

田原小学校令和6年度卒業生として本校を巣立つ42名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。心からお祝いを申し上げます。また本日は、多くの来賓の皆様、並びに保護者の皆様にご臨席を賜りました。卒業生、教職員を代表して、心からお礼申し上げます。

さて、只今皆さんにお渡ししました卒業証書は、6年間いろいろな困難を乗り越え、頑張ってきた証です。皆さんは登下校や縦割り活動等の際に、下級生に対して常に優しい眼差しを向けてくれていましたし、何より6年生の教室にはいつも穏やかで温かな空気が流れていて、私は皆さんが醸し出す雰囲気がとても好きでした。これから大きくなってもずっと今のままの雰囲気でいてほしいですし、やりたいこと、できることを見つけて、ひたすら前を向いて歩き続けてほしいと願っています。

そうは言いましても、「自分探し」などという言葉があるように、現代の若者の中には、「自分には何ができるのか」「何をやりたいのか」がよく分からないという人も多いようです。私は、自分自身を知るためには、これからの長い人生の中で、いろいろな人との対話、自然や動植物などいろいろなものとの対話、地域行事や習い事などいろいろなこととの対話、それらのことに加えて自分自身との対話、そういった「対話」を重ねることではないかと考えています。

ここで少し、皆さんと一緒に自分との対話というのを実感してもらおうと思います。私が今から三つのことを質問しますので、頭の中に思い浮かべてみてください。(発表してなどと言わないので安心してください)では、考えやすいように目を閉じてみましょう。まず一つ目、「自分にとってできて当たり前だと思うこと」です。二つ目は「最近、すごく腹が立ったこと、悔しかったこと」です。三つ目は、「お金や時間をついつい使ってしまうこと」です。質問はこれで終わりです。目を開けてこちらを見てください。

ここで種明かしです。自分にとってできて当たり前だと思うことは実はあなたの得意なことです(これは昨日の修了式でもお話ししましたね)。腹が立つこと・悔しいことはあなたが大切にしていることで、ついついお金や時間を使っていることはあなたの好きなことです。つまり、好きで、得意で、大切なことが、あなたが本当にやりたいことということになります。

例えば、冷蔵庫にあるもので適当に何か作るのは当たり前にできるという人がいたとしましょう。テストで悪い点を取って馬鹿にされても腹が立たないのに、自分が作ったものを「あまりおいしくないね」と言われるとカチンとくる、さらに家電製品や料理器具のお店についつい行きたくなるというなら、その人はもう料理をやりたいと思っているのでしょう。

ちなみに私はできて当たり前だと思ったのは、「誰にでも笑顔で誠実に接する」ことを思い浮かべましたし、子どもをないがしろにするような虐待や体罰といったニュースを目にすると無性に腹が立ちます。さらに本屋さんに教育関係の本があるとついつい買って見てしまいます。そう考えると私は、つくづく教師という仕事が好きでやりたかったことなのだと思い知ります。皆さんと同じく、私も三月末をもってこの学校を卒業しますので、また新たに自分との対話の中でやりたいことを見つけていこうと思います。

もしかしたら、皆さんの中に「自分のやりたいことが分からなかった」という子がいたかもしれません。でも、がっかりする必要などありません。人生は長いのです。これから時間をかけて、いろいろな人・もの・こと・そして自分との対話を重ねるうちにいつか見つかるものです。焦らないことです。

最後になりましたが、保護者の皆様におかれましては、高い所からではございますが、心よりお子様のご卒業をお祝い申し上げると共に、これまでの田原小学校に対する温かくそして熱いご支援・ご協力に感謝し、心から厚く御礼申し上げます。結びになりますが、卒業生全員の前途に幸多かれとお祈りし、式辞といたします。